曇天の続き

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2022-11-19 Sat.

非視

2022-11-19

池袋に行く。

池袋に行くことは、めったにない。
これはきっと「恵まれた生活」と言っていいのだろう。

だから、池袋に行くと、いつも迷う。
今回は、時間がなかったので、地図アプリに目的地を入れ、ナビゲーションを起動することにした。

ナビに指示されたよりも前に出発する列車に乗る。
池袋駅に着いたら、ひとまず階段を下る。
念のため用を足しておこう、としたが、やっぱり迷う。
名前と位置のわからない改札を出て、列車の方向から推察し、とりあえず西口の方面に歩く。
20C、というのが指示された出口だ。
出入り口の案内は見つからず、出口に記されている数字は小さく、近づかないとサインを読み取れない。
見づらいアプリの地図を苦労して確認すると、どうやら行き過ぎた模様。
嘆息して、希望の見当たらない東武ホープセンターだかタイ料理店内だかを突っ切る。
場末になんとか20C出口を見つけて、階段を上る。
地上に出てもここがどこだかわからない。
地図上にある交番を見つけたので、そこまで行って改めてルートを確かめる。
「エビス通りを行け」とナビが言うので、バカ正直に進み、風俗店店員の嘲笑をあびる。
上映開始時刻の5分前に到着。
現金でお支払い。

池袋シネマ・ロサには、7年ぶりの来訪となる。
できれば避けたいたたずまいの映画館だが、選択肢が限られており、今回はやむを得ない。
これも念のため言っておくが、自分が偏屈だからであり、映画館に非はない。
今日も、空いているのに、隣の席が埋まっている座席をスタッフは指定した。

「夜明けまでバス停で」。
モチーフにした事件に以前から関心があり、映画になったことを知り、たまたま予定があったので来てみた。
主演は、もしかしたら学校の同時代の先輩になっていたかもしれない、板谷由夏。
それゆえのリアルタイム「SO・TA・I」世代であり、「avec mon mari」も映画館に見に行った…、と思い込んでいたが、調べても記録がない。

上映が始まってすぐに後悔する。
普段から「暗い映画」を避けるようにしている。
事件の結果、そして結末の結末まで知っている身としては、この映画が暗いものになるに違いない、と察し、苦しくなった。

その後悔は、裏切られることになる。
もちろん悲惨ではあるが、悲壮感がない。
これも板谷由夏のなす業であり、「板谷由夏が主演でよかった」と何度も思った。

途中で出てくる、「自助、共助、公助」には、文脈上、心底腹が立った。
何度も言及されているが、順番が逆だろう。
振り返ると、どう考えてみても最初には周囲の助けがあったし、政府は共助をシステマティックに行うための発明であろう。
何とか助けられながら、自分の足で立てるようになり、自分の身の回りのことができるようになってから、ようやく周囲のことまで考えられるようになる。
政治家がこれを口にすることに、そもそものセンスを疑う。
きっと、環境と才能に恵まれていたのだろう、あるいは天上と地を指さして生まれたか。

そして、中盤で「これは、ああはならないかも」と気づかされて、楽になった。
何も解決していないものの、希望がある、痛快な娯楽作品であった(個人の感想)。
見ていなければしばらく誤解したままで過ごしたと思う、見ておいてよかった。

帰りももちろん道に迷った。
いったん五差路に出て、あの西口の正面階段を下らないと、帰れる自信がない。

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