歌は残り、人は集う
午前中、用事があり駆り出される。
担当セクションで、日ごろから思っていることをぶちまけたら、一部から好反応。
感謝している半面、誤解を持たれても困る。
とにかく、やるべきことはやったので、逃げるように立ち去る。
これからは、自由時間。
セブンイレブンで、予約チケットを受け取る。
時間があるので、シネスイッチ銀座で「日日是好日」。
僕はすでにこの映画がテーマとする境地に達しており、再確認となった。
話が都合よくて、薄くないか、と思うけれど、「ガールズ・ムービー」という点で、甘めに採点してしまう。
もはや、明るいガールズ・ムービーしか、僕は映画を見ることができないのかも。
映画館の近くにラーメン屋があることを以前聞いており、探してみたが、すでに移転。
移転先は、泰明小学校の近くのようで、そのあたりまで歩く。
やはり、店には行列ができていたので、今回は見送り。
それにしても、この辺りにラーメン屋が数店舗集まっていることがわかり、今後の探訪が楽しみ。
いくつかの丸源ビルの前を通り過ごし、新橋駅。
東海道線で横浜、京浜東北線で関内。
まだ時間があるので、イセザキ・モールを物色。
ここには初めて来た。
横浜は、なんと豊かな場所なのだろうか。
豊かだから多様性が維持される。
商店街入り口の焼き鳥屋に入る。
ビールとガツとやきとり数本を頼む。
ガツは大盛りで出て来て、下を探るとオニオンスライスが出てきた。
でもここは、とガツといっしょにタマネギに挑戦してみると、意外に食べられる、というよりおいしい。
タマネギの苦手な刺激がなくて、甘い。
ハツも、レバーも、大好きな砂肝も、くさみがなくて柔らかい。
豚バラも、いい塩加減。
ビール2杯と赤霧島、焼きおにぎりまで食べて、3,000円いかなかった。
昼飲み、最高。
関内から歩くことは断念して、京浜東北線で石川町。
そこから高速道路下を歩くことにする。
予想通り、風が強くて寒い。
予想していたからこそ、関内駅前の駅ビルのトイレで、使い捨てカイロを腰に貼ったのだが、それでも寒い。
でも、僕には歌がある。
朝からずっと聴いている。
20分くらい歩いて、横浜ベイホール。
スタンディングは、2005年11月12日の真心ブラザース再結成ライブ以来。
慣れないことに、とても緊張してしまう。
「ICE -The 25th anniversary LIVE-」。
ICE:国岡真由美(Vo)、山下政人(Dr)、小川真司(B)、崩場将夫(Key)、田口慎二(G)、大石真理恵(Per)、柴田章子(Cho)、鈴木精華(Cho)。
初めてのICE。
これまで行く機会を得ないまま、行けなくなってしまった。
20周年の時は仕事でそれどころでなくて、BSフジでの放送すら見逃してしまった。
25周年があるとは、とても幸運である。
観客は、ほぼ同世代ばかり。
フード付きパーカー爆発である。
こんなにも多くのファンが待ち望んでいたのか。
いや、当然だ。
立ち見エリアは両端に設けられていた。
僕は右後方に位置したが、柱でステージが、特にボーカルが見えないのではないか、と気になる。
座席をとれなかったり、開演30分前に到着したりした自分が悪いのだが、すごく心配。
そして、開演。
国岡さんの姿は柱の左ギリギリで見えた(後で、「国岡さんははだしだった」という記述をウェブで見たが、自分の立ち位置からは確認できなかった)。
数日前から、「PEOPLE, RIDE ON」で自分が泣くのではないか、と恐れていたのだが、そんな心配は無用だった。
1曲目の「spirit」で、すでに涙が出てきた。
ICEを聴いたのは、まだ小倉にいた時からだ。
多分に漏れず、宝石店の深夜CMでICEのことを知ったのだろう。
かっこよくて、気持ちよくて、疾走感があって、ずっと聴いていた。
ICEばかり聴いていると他のものが聴けないので、曜日を限定して聴いていたくらい、好きだった。
カセットテープを再生できるウォークマンを買って、受験勉強中に聴いていたことが多かったので、「I'M IN THE MOOD」を聴くと、あまりよくない思い出がよみがえる。
でも、それがあったから、上京できた。
こんなに美しく、すばらしいものがある、と知ったから、つまらない自分に起こるつまらない日常をくぐり抜けてきた。
いつかはICEのライブに行こうと思っていたが、いつの間にが時間が過ぎ、そのままどうしようもない状況になってしまった。
ICEを聴いていた知人というのに今まで1度も会ったことがなく、ICEのかっこよさを、これまで誰とも共有できていない。
重要なのは「知人がICEを聴いていた」という点であり、残念だけど「ICEを聴いていた人と知人になりたい」わけではない。
「ラヴァーズ・ロック」で泣き、「SLOW LOVE」で泣き、「MOON CHILD」で泣く。
曲で思い出して感情が高ぶるのもあるけれど、詞が今の歳の自分に響いてくる。
あんな時から、こんな詞を書いていたのか。
アルバムの曲に入っていたシャウトは、ドラムの人のものだったのか。
3ブロック終わったところで、アコースティックブロックになり、それもいいと思うと同時に、「ああ、もう半分は過ぎた、もう終わってしまう」と気付く。
「Love Makes Me Run」で大合唱して、終わってしまった。
アンコールでは、未発表曲。
また、何という詞なのだろう、「夜の星」ってなんだよ、拍手できないくらい落ち込む。
最後はやはり、「PEOPLE, RIDE ON」。
ああ、ライブアルバムで聞いたあれだ、あれができるのか!
「それこそが生きる理由」って。
書いている今でも涙ぐむ。
たとえば、通常のライブなら、その年に出したアルバムをメインに据えて、アーティストはその年々でいろいろと試すことができる。
それを見て我々は、「今年はこうで、来年はどんなふうになるんだろうね」という話ができる。
でも、ICEには、それがもうない。
全くなくなってしまえば、また別の気持ちになるのだが、すべてがなくなってしまっているわけではない。
「ないのにある」というか「あるのにできない」というか。
だから、今のICEのことをどう見ていけばいいのか、どう期待していけばいいのか、ものすごく苦しい。
そういう姿を、ステージ上も観客も特に見せないようにしているし、でもみんな間違いなくそのことを思っているし。
そういう気持ちがまぜこぜになって、落ち着き先がない。
帰りは、元町商店街を通って帰った。
やはり、寒い。
石川町駅手前の高速道路のカーブが印象的。
今日は生涯最高の休日の中の1つであった。
でも、もっと最高の形というのがあったはずではないだろうか。
後悔ばかりだ。
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