逃桜
2020-04-04
不要不急の用で出かける。
久しぶりの「目的のない外出」で、いつも持ち歩ているイヤフォンを家に忘れてきた。
自宅から40分ほど歩く。
車通りは多いが、人とすれ違うことはほとんどない。
いつも散髪をお願いしている理容師から「川沿いに、桜がきれいに咲く場所がある」とうかがっていたので、この機会に見に行くことにしたのだ。
こんな機会でもなければ、僕はすぐに都会に行ってしまう。
桜は咲いていたが、風が強くて、すでに花弁が散る量も多い。
桜の下には、シートを広げてただ座っている人もいるし、弁当を広げている人もいる。
周辺に比べれば散歩をする人の数は多いが、込み合っているというわけでもない。
菜の花が咲いている川のそばへ降りようとすると、看板が立っており、「川の近くは放射線量が高いので、近寄らないでください」と書いてある。
晴れていて、少し汗ばむくらいの、いい陽気だ。
橋を渡った先に小さなパン屋が開店しているのを発見した。
窓越しにのぞいてみて、やはり実物を見てしまうと誘惑に勝てず、いそいそと入店し、購入。
PayPayで支払った。
街まで出る。
街を歩く人の量は、とても少ない。
大きな店は閉まっていて、ある小さな店ではバーゲンセールをやっていた。
店員が元気よく声を出し、客はそれなりにいた。
ラーメンを食べ、コーヒーを飲み、有線マウスを買い、日用品と夕食を買い込み、バスで帰った。
書店はどこも閉まっていて、本は買えなかった。