明人
司馬遼太郎の本をほとんど読んだことのない僕が「坂の上の雲」を薦められたのは2003年頃だった、と記憶する。
だけど、書店で作品の長さに圧倒され、結局買わずじまいだった。
そのうち、NHKがついに映像化する、という話が耳に入ってきた。
僕は、たぶん文章で読むことは最後まで遂げられないので、簡便ながらTVドラマで済ませてしまおう、と考えた。
それから何年経ったのだろう。
残念ながら映像化プロジェクトに大きな支障が生じてしまい、プロジェクトは難航した。
また、話の長大さからプロジェクトの規模も大きくなった。
つまり、僕はずいぶん待った。
そして、2009年末。
待ち望んでいた放送がついに始まった。
現時点で第3回までの放送が済んでいる。
今のところの僕の感想はこうである。
「つらい…」
「水曜どうでしょう」のディレクターのように、やはりつらいときは「つらい」という言葉が口をついてしまうのが人というものらしい。
それにしても、なぜつらいのか。
よくよく考えると、1回分の放送時間は大河ドラマの倍の90分、つまり毎週2本分の大河ドラマを見ている計算になる。
NHKでは途中にCMが入らないので、これは民放の2時間ドラマに匹敵する長さだ。
それだけ長いと、一晩の放送で何度も見せ場が出てくる。
それが毎週続くのだ。
まともにつきあっていると、見終わったときにくたくたになってしまっている。
それに、第3回の後半から話が大きくなってしまい(仕方がないけど)、内容が複雑で難しくなってきた。
それが原因で、見るのにますます頭を使うようになってしまった。
「やろうぞな、ベースボール!」の時代が早くも懐かしい。
そういうわけで、前回の放送後の「NHKスペシャル チャイナパワー」は、疲れすぎて頭に内容がいっさい入らず、我が家では放送が環境映像のように流れていた。
よっぽど根気強い人じゃないと「坂の上の雲」を見ていられない、と僕は考える。
少なくとも、僕には無理だ。
大河ドラマを好むうちの祖父でも、絶対に見ていないだろう。
祖父は、午後9時頃には眠くて体機能を停止しかけていたのだ。
可能なら、放送時間を45分に分割してくれないだろうか。
あるいは、午後7時30分からの放送、とか。
知人に、「「坂の上の雲」見てる?」と聞くと、
「けがれを知らぬ、明るい人」と答えた。
「何?」と問うと、「サラ・ブライトマン」と答えた。
そしてしばらく、アーアーうなっていた。