水没
「加齢とともに、酔った夜のことをより深くより長く後悔するようになる」
知人の弁である。
先日、この知人に会う機会に恵まれた。
世代間の考え方の違いの話になった際、僕の発言に対し、
「それは、文化の違い。今問題にしているのは、年齢による考え方の違いだ」
という正しい指摘をしていただき、また恐縮した。
久しぶりに会ったことで、以前の関係性がリセットされ、持ち前の人見知りと自ら醸し出す疎外感で、要領を得ない会話の続いた悔い残る夜を越えた、次の日のことである。
起きると猛烈な頭痛。
シャワーを浴びても、歯を磨いても収まらず、再び寝床へと戻った。
その日の夜、調子だけは取り戻した。
就寝までの時間、スマートフォンで音楽でも聞こうとイヤフォンを探すも、見つからない。
鞄の中にもなく、「落としてしまったか」と思った後、推理力が働いた。
昨夜着ていたシャツのポケットを探ると、やはりそこにイヤフォンはあった。
シャツは既に洗濯済みで、部屋干しされていた。
「2年間使った」と自分に何度も言い聞かし、新たなイヤフォンを購入するために家電量販店へ向かった。
僕が求めるイヤフォンは、耳栓型で、長さ0.6mのものである。
胸ポケットにプレーヤーを入れた際、短いコードであればコードが邪魔にならない。
プレーヤーを鞄に入れて使う際は、別に持っている0.6mの延長コードを用いる。
事前にネットで調べて、オーディオテクニカのATH-CK330Sにしようと決め、店を探すも、商品が見つからない。
散々探し回り、見つけはしたが、0.6mの長さのイヤフォン売り場は足元の最下段、わずかな区画に数種類だけである。
オーディオテクニカの商品に絞ると、長さ0.6mの商品は1択となる。
僕がほしいもののいくつかは、きっと需要がないのだろう。
値段は約2,000円。
これまでも断線や紛失のリスクを考えて値の張らないものを選んでいたし、そうでなくても0.6mであるというので選択肢が限られていたのだが、今後は水没リスクまで考慮し、商品を選ぶ必要がある。
そう考えると、いくらコードが短くても、Bluetoothは時期尚早である。
そもそも、高いものを選んだところで、耳のスペックが知れたものである。
これを機に、酒席でひっきりなしに酒を飲むのは、もうやめよう。
何度も決めていることだし、年齢を重ねれば重ねるほどシビアに効いてくる後悔と反省だ。
だが、悲しいかな、大事なことから忘れてしまう。
そして、宴のノリについていけず手持無沙汰になるが上に進んでしまう酒に、また飲まれてしまうのだろう。
要は、参加しないに越したことはない。
でも、会いたい人、話したい人がいることも確かではあるのだ。
次の機会のためにも、人に迷惑をかけず、煙たがられないようにしよう。