悲歌
諸般の事情により、毎年6月は音楽月間である。
リストを見てアーティストの定点観測を行い、新譜が出ていれば入手する。
また、この1年で気になった音楽があれば、それも入手する。
先日、最近得た知人に「音楽はいつもどういったものを聴いているのですか」と尋ねられた。
「がっかりさせるような答えしかできないので、言っても仕方ないと思う」と僕は答えた。
「そちらはどういったのを聴くのですか」と尋ねると、その人は「あまり有名ではないのですが」とミュージックプレーヤーを見せてくれた。
本当に有名ではないのだろうか、僕はプレーヤーに表示されたアルバムのアーティストを知らなかった。
話によると、知る人ぞ知る、そして最近また注目されている、1980年代から活躍しているアーティストらしい。
せっかく相手から歩み寄っていただいたのに、対応できなくて申し訳ない。
そして、お互いに自分の好きなアーティストを探り合いながら、盛り上がることのない音楽談義が数分続いた。
すべては、僕の責任である。
所詮、1990年代半ばという「敗北世代」である。
本気で「好きなアーティスト」を明かしたところで、きっと相手が困るだけだ。
しかも、好きと言っても、熱狂的なファンというわけでもない。
アルバムとして発売されている入手しやすい音楽だけに興味がある程度なのだ。
中途半端さがなおさら気まずくさせる。
好きなアーティストを真摯に挙げてみるとすると、次のようになるだろう。
ICE、真心ブラザーズ、BONNIE PINK、First Impression、Jenka、FISHMANS、paris match、Cymbals、Original Love、上田正樹、Cosa Nostra、m-flo、MISIA、川本真琴、ram jam world、8分のバニラ。
このあたりで話が盛り上がることなど、きっとありえないと思う。
音楽の話で盛り上がる楽しみは、僕からは未来永劫奪われてしまっている、と覚悟を決めている。
念のため「今は、和田アキ子の「リズム&ブルースの女王」が気になったから、試しに聞いているんだけど」と相手に伝えてみた。
どうやら、この答えも相手を満足させることはなかったようである。