典福
運転免許の更新に行ってきた。
前回の更新は、たしかCOVID-19の感染者が急増したころだったはずだ。
よく覚えていないが、免許更新の業務がとりやめとなり、書類を郵便で送って暫定的な期限延長手続きをした。
期限延長の書類を発行してもらい、3か月くらい延ばしてもらって、そのあと更新手続きのために出向いた。
それ以来となる。
この辺は、免許更新の機会にしか来ない。
更新手続きの場所まで行く道の風景は、前回と比べて少し変化していた。
まず、全国チェーンの書店の店舗がなくなっていた。
COVID-19の感染が拡大し、人々の行動が制限さ…それぞれが自粛していた余波を受けてなのか、閉店したのだった。
残念だけど、コンテンツストアはネット上に置き換わっていく時代なので、まあ受け入れる。
跡地には、建物は取り壊されたのか居抜きなのかわからないが、新しく24時間営業のフィットネスジムが営業していた。
この辺りは、同業態の店舗がいくつもある。
それだけ需要があるのだと思う。
書店のみならず、いくつかの店がなくっていた。
その跡には、住宅が並んでいる。
雑木林だった場所にも、林がなくなり、住宅が建っている。
道もきれいに整備されている。
住む場所が用意され、そこで人々は眠り、必要なものはネットで取り寄せ、それぞれの生活スタイルに合わせジムに通っているのだろう。
今回の免許更新の手続きで、変わったことがいくつかある。
その1つが、事前の講習予約である。
少し前だと、個人番号カードを所持していれば、オンラインで講習を受けられる、みたいな仕組みがあったようだ。
しかし、マイナ免許証が導入されたきっかけで、オンライン講習はマイナ免許証の所持者に限られることとなった。
この辺り全く意味が分からないが、とりあえずウェブを使って講習の予約を取って、今日に臨んだ。
ちなみに、予約は必要ではないが、予約しないで来ても、予約優先で講習が受けられないかもしれないよ、とのことだった。
実際、今回の現場で、そのやりとりの悶着が起きているのを見た。
あまり行きたくない場所が2つあって、1つは携帯電話の手続き、もう1つは運転免許の更新手続きである。
これらの手続きには、ありとあらゆる属性の人たちが集まってきて、トラブルもよく見かける。
携帯電話については、番号ポータビリティ制度の手続きを最後にして、リアルなサイトでの手続きをすることはない。
手続き会場に行くと、入り口に係員が待ち構え、訪問者を案内している。
向こうはきっと親切のつもりだろうが、職業柄か威圧感を受ける。
見ようによっては教えてくれているようだが、結局は指示に従わせようとしている。
そちらは毎日やっていることだから慣れているだろうが、こっちは数年に1度のイベントであり、しかも行くたびにシステムが変わっていて、要領を得ない。
でも、容赦がなく、我々は無力で従順な市民にすぎない。
建物に入ると、こちらの不勉強が原因にちがいない、よく理解できない行政用語を投げかけられ、係員に誘導され、手続き開始時刻まで待たされる。
誘導された狭い場所に100人ほどが待機している。
僕が予約した開始時刻の講習予約の人が呼ばれ、列に並ぶように指示される。
列に並んだが、そこからさらに5分ほど待たされる。
本当によくわからないが、きっとこれで余計な手間が省けているのだろう、その手間が「我々のもの」であったことを信じたい。
受付は自動受付機で処理されるのも、今回の変更箇所である。
事前に取得したQRコードをかざし、画面を操作すると、従来のカード式免許証か、それともマイナ免許証か、はたまた両方必要か、選択を迫られる。
列に並ぶ時間を十分に与えられたため、ウェブで情報を得たが、自分にとってマイナ免許証のメリットが見いだせない。
マイナ免許証だと、転居時の住所変更が個人番号カードの手続きのみで済むのだそうだ。
その一方で、個人番号カードを更新すると、マイナ免許証の書き込み手続きが必要、と書いてある。
今年度中のシステム改修を終えればその手続きも必要なくなるらしいが、いよいよ意味の分からなさも突き抜けてしまい、もはや晴れ晴れとした気持ちになってきた。
よって、従来からのカード式免許証を選ぶ。
身分証明のためには、個人番号カードと運転免許証のダブルスタンバイの方がいいと考えた。
セキュリティのために暗証番号を2つ設定する必要があるが、そのうちの1つはすでに入力されていた。
免許証番号から生成された番号のようだ。
2つ必要な理由もこれまたよくわからないが、そんな親切をするのなら1つだけでいいような気もし始め、結局2つとも新たに設定する。
幸運なだけに過ぎないと思うが、これまでこの暗証番号が必要になったシーンは1度もなかった。
紙が印刷されて、記入台へと進み、紙に書かれた「最近、気を失ったこと、ない?」みたいな質問への回答を記し、今度は更新料を払うために、また列に並ぶ。
さっきの機械には意思確認するための機能が備わっていないのかもしれないし、こうすることで記入を確実にチェックできるし、金の収受は機械になんて任せていられないのだ。
更新料の支払いは現金以外でもいいらしく、交通系ICカードで支払った。
現金以外の支払いの領収書は、本日中には出せないとのこと。
隣の窓口では、「iD使えますか」という問いに「すみません、iDだけは使えないんです」と返答していた。
視力検査の列に並ぶ。
列が一向に進まない。
午後の開始時刻までまだ時間があるのだ。
前に並ぶ人の用紙が目に入った。
「あれ、年齢は違うけど、誕生日近いじゃん」とテンションが上がったが、よく考えると、ここに更新手続きに来ている人は、前後1か月程度の誕生日の人たちである。
用紙には、先ほど決めた暗証番号が、離れた場所から視認できる大きさで印刷されている。
何度も言うけれど、わけがわからない。
これも視力検査なのかもしれない。
定刻を迎えたのか、視力検査場の扉が開く。
この日のために、手持ち不足気味だったコンタクトレンズを購入した。
鼻に眼鏡の跡が残らないように、起床してすぐに着用している。
老眼鏡をかけ始めて3年近くなるが、コンタクトレンズは近視用。
眼鏡とのバランスをとるため、コンタクトレンズの度数の調整が難しかったのだが、視力検査はクリアした。
次は、写真撮影。
前回は、流れ作業の中で気を抜いたところに撮影の順番が来てしまい、その結果、髪型が乱れ、シャツの襟が傾いた写真になってしまった。
「この無残な写真で数年過ごすのか」と気が沈んだが、誰にも気にされることもなく、何事もないままに更新を迎えた。
今回は一応鏡で髪型と身なりを整え、写真撮影を終える。
次は、講習。
講習室に14番目に入る。
講習の定員が70名だそうで、定員がそろうまで30分待った。
「予約したことの意味はあるんだよね」という問いをこらえるだけで、疲れてしまった。
待っている間、前回の更新からの運転履歴を思い返す。
暴風雨の中、死にかけながら天草五橋を渡った以外は、短時間の運転数回だけだ。
運転免許を取得してから幾星霜、ここまで車を所有せずに暮らしてきてしまった。
車の知識が全くなく、大人たちの話の輪に入れず、情けない思いをしている。
最近、Geminiを使うようになってきて、時間があるので「残価設定クレジットで550万の車を購入、金利2.3%、36回払いで、残価率70%だと、月の支払いは?」と尋ねると、計算過程とともに答えてくれる。
残価にも金利がかかるよう説明を加えても、Geminiは理解してくれた。
優秀すぎて、もう部下のいない境遇を嘆く必要などないように思う。
きっと、つまらない冗談でも、Geminiなら相手にしてくれる。
それにしても、一般的な家庭で5.5M円の車を保有しようとするのが、今の世の中なのだろうか。
それに加えて残価分の金利まで支払うのだから、恐ろしい。
隣の席には男が座り、講習が始まり、傾聴力養成の訓練と認識し、しっかり聞いた。
法令もいろいろと変わっていて、一番驚いたのが、 電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は16歳以上なら免許なしで運転できる、しかもヘルメットは推奨だが義務ではない、ということだ。
どれほど便宜を図ら…、推奨されているのだろう、と思う、なんだよ「特定」って。
最後はビデオを見て、人がはねられているのを見てしっかり声を上げ、いいところでビデオが止められて、時間となる。
公金を費やしてビデオを作成しているのだから、いつかは最後まで見てみたい。
もしかしたら、伊藤健太郎や吉澤ひとみなどが出演しているかもしれない。
免許証の交付は、事前に配布された番号順で呼ばれる、とのこと。
公安職に番号で呼ばれることは、ここでしか経験できないものとしておきたい。
周囲と番号を見合わせて、一列に並んでほしい、と指示される。
ただし、マイナ免許証との関係で、呼ぶ番号は連続していないらしい。
自分の番号は465番で、460番が呼ばれたところで、次かもしれないと窓口の近くに待機。
463番が呼ばれ、自分のほかに誰も近づいてこないので、次は自分かと構えていると、464番が呼ばれる。
ここが本日一番の驚きで、今回も「いろいろな人が集う場所であるな」と実感する運転免許更新であった。
ICの記録内容を確認するべく、交付された免許証を機械にかざし、暗証番号2つを駆使して、確認終了。
交通安全協会の活動に敬意を払い、立ち去る。
帰宅し、過去歴代の運転免許証を並べてみる。
「苦労と我慢をしない」と決めてから、周囲の人たちの髪が薄くなったり白くなったりするのを横目にしてきた。
実年齢を口にすると、「見えないですね」と言われることが多いが、それはやっていることがすべて幼く、思ったことと自己都合ばかり口にしているからであり、つまり相手は呆れているだけなのだ、ということ十分に自覚している。
実際、つまらない冗談への対応に時間を費やさないし、そもそも何もできない、それはGeminiがやってくれる。
でもさすがに、今回の写真は前回よりかなり老けてしまっており、歴代の変化量と比べても、最大のように思う。
昔は若かったんだな、と今にならないと気づかないし、もう遅い。