曇天の続き

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2024-07-06 Sat.

扼喉

2024-07-06

仕事のことで頭がいっぱいだ。
気を抜くと、仕事の段取りについて考えてしまう。

「働いていると本が読めない」という話が出てきた。
それを聞いて、最近本の内容、特に小説の内容が頭に入ってこないことに気付いた。
どこかで仕事のことが頭を離れず、新しい情報が入ってこないのだろう。

そんな状態が続いていたので、今週は定時に仕事を切り上げ、頭を休めることを心がけた。
具体的には、情報に触れない、先のことを考えない、音楽を聴く。
終業後は就寝するために行動し、早く眠る。
そうすると朝4時ごろ目覚めることもあるのだが、そうなれば仕事をすればいい。
もっとも、疲れが蓄積してたらしく、就寝時に決めた起床時刻まで目覚めない。

「労力で仕事をしない」と決めている。
単に体が弱く、無理がきかないのが、その理由だ。
労働量で質を補おうとする尊い考えからも、距離を置くようにしている。
「不遜な考え方」ととらえられることもあるが、雷同したくなるのを我慢して、気にしないふりをする。
どうせ、どこにも居場所を見出せない自分なのだから。

労力ではなく「能力で仕事をする」ことをモットーとしている。
仕事のやり方を改良することで、まず仕事の質を上げ、次に生産性を上げる。
よりよい方法を自分の頭で発明する必要はない。
うまくいっているやり方を学び、それを自分の分野に適用すればいい。
所詮僕は、最先端を走っているわけではなく、優秀な人たちが残してくれた方法論で食べているだけなのだ。
そのために、定時で仕事を終え、1日の残りの時間をできるだけ学習に充てる。
近頃では、勤務時間中にも調査して、やり方の改良や組み換えについて検討し、それを組織化している。
もう、そういう立場である。

仕事の肝を見いだし、肝の部分の仕事だけを確実に行う。
重要部分を高度に構築する能力を発揮し、他の人には容易に実装できない仕事を果たせば、ひとまずそれほどは非難されない。
できていない部分については、別の専門家に仕事をお願いすればいい。

人前で手間をかけていないので、一見すると仕事をしていないようにも思われるようだ。
「そう言うのなら」ということで他の人にお願いしてみると、ほとんどの場合、時間をかけて作られた大作ができる。
それもありなのだろうが、僕なら短時間で、しかもシンプルなものを作る。
時間もかけずに、できるのがシンプルなものだと、他人には物足りないようだ。
周囲から手間をかけていないように見えるのは、仕事をしているときだけを見ているからだ。
実はそこに至るまでの鍛錬に、莫大な時間を費やしている。
シンプルな解決策は、後から見れば明白だが、実装前に思いつくことが難しい。
そして、明白でシンプルな解決策でないと、他人に理解して運用してもらえない。
いずれ僕はいなくなるし、そして誰もがいなくなる。

僕はこれまでずっとエンジニアの仕事しかできていない。
エンジニアとは、「機能するものを作る」仕事だ。
しかも僕は、ごく狭い分野のスペシャリストに過ぎない。
人から呼ばれなければ仕事はなく、大きなシステムのごく一部だけ、ほとんど点みたいな部分でしか貢献していない。
その部分についての実装は誰にも口出しを許さず、専門家たちだけで決める。
要求を理解し、機能を満たす解決策を、自分で持ってきて提供する。

僕に回ってくるような仕事は結局、難解な仕事である。
仕事の最初にすることは、不本意ではあるが、相手の無謀な希望を打ち砕くことだ。
盛りだくさんの要求をシンプルな要件に組み替え、限定された機能で我慢してもらうことをお願いする。
それで不満なら、よそを当たってもらう。
でも、ご機嫌で融通の利くような人たちがそれまでに実現できていないから、偏屈な僕のところに仕事が回ってきているわけである。
結局、僕の拙い解決策で我慢してもらうのが現実的な切り抜け方となる。
大本のクライアントへの説明材料を持たせて、それでやってもらう。
僕の解決策は、所詮その場をやり過ごすためのものに過ぎない。
いずれきっと優秀な人が現れ、難解な問題も思い付きの解決策も一掃してくれるはずだ。

これからも、僕にはエンジニアしかできないのだろう。
スペシャリストとしてプロジェクトに呼ばれて、仕事をすれば即座にお払い箱である。
そもそも、どんなことでもやれるような自信はない。
僕がカバーしきれない部分は、それは大部分であるわけだが、専門家でもない担当者に埋めてもらうことで依存している。
相手の意にも沿わず、手間なく動くことだけを目指し、他人の仕事を肩代わりすることもないので、重宝がられることはない。
他人の仕事を奪うくらいなら、自分のスペシャリティを高める時間を確保した方がいい。

こんなことをいつまで続けられるものか、とても不安だ。
古臭いシステムは、早晩排除される。
だから今、余生を過ごせるだけの資産を受け取りたい。

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