曇天の続き

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2023-09-05 Tue.

雷途

2023-09-05

本日も、普通グリーン車2階席。
500ml缶を開ける。
ラジオはKBC「めぐみのラジオ」。
水曜日のカンパネラが新ボーカルになってから初めて聞いた「マーメイド」。
すごくよい、何かを彷彿させるよさだ。
剽窃はよくないとしても、もう新譜は望めない状況からすると、「っぽさの継承」はあってもいい、むしろあってほしい、と願うのが、朝本浩文ファンとしての感想である。
メールテーマは「5万円当たったら、どう使うか」。
僕なら、ジャケットを1着新調する。
「衣食住」のうち、余裕があるときにそろえておくべきは「衣」であることを、いやというほど思い知らされている。
メールの回答に「離れて暮らす家族の分も含めた防災グッズをそろえる」とあり、人間の格の違いを思い知らされる。
曲が2曲連続でかかるのは珍しく、「お察しください」とのこと。

予定より1本早い列車で、宇都宮駅に到着。
駅ビルを抜け、東口のLRT乗り場へと向かう。
黄色と黒の真新しい車体の輝きが、未来を感じさせる。
扉横にあるICリーダにタッチ。
席は埋まっていて、僕は運転席の後ろに立つ。

ロータリーの中にある停留場からの出発で、ロータリーから出る際に直進する道路を直行する形で横切ることになる。
信号制御されているとはいえ、どうも危ないな、とこの時は思った。

静かな加速、穏やかな減速。
小学生のころ、到津遊園の林間学園で、路面電車に乗って通学していた時のことを思い出す。
林間学園の生徒を乗せるため、西鉄は専用の路面電車を運行していた。
自宅最寄りの電停が路面電車の遠回りルートの起点であり、片道1時間乗って到津遊園まで通っていた。
林間学園自体は憂鬱で仕方なく、路面電車に乗っているときが気分高揚のクライマックスであった。
運転席の後ろに立ち前方を見ていたのは今とやっていることが変わらないが、昔の加減速時の音は大きく、今は実に静かだ。
路面電車が廃止されたのを期に、林間学園に行くのをやめた。
どう考えても自分には合わない催し物であった。
とにかく、21世紀を迎えられなかった路面電車を有する街の人間としては、宇都宮や富山がうらやましい。

終点の「はがたかねざわこうぎょうだんち」がとても言いにくそうなアナウンス。
交差点では、右折で待機している自動車の列の横を、徐行して通過する。
軌道は国道4号を陸橋で越えた後、専用軌道となり右にカーブしていく。
車両基地のための進路変更だろうか。
路面電車でありながら、複雑な配線の平石停留場を見るのは、気分が躍る。
ここで運転士の交換があり、「油圧が安定しない」との引継ぎを次の運転士に伝えていた。
乗客である僕の不安をよそに、油圧の安定しない電車は専用軌道で鬼怒川を超え、アップダウンを経て、郊外の住宅地区へと至る。
ここを抜けると、専用軌道になるときに分かれた、駅から延びる通りに合流し、また併用軌道。
バスとのトランジットセンターを経て左折し、上り下りを果たし、終点に到着。
ICカードでの乗り降りは、北九州BRTと同様で、各ドア横のリーダーにタッチすればよろしい。
これで、10日ぶりに関東の鉄道完乗を回復。

名前の通り、工業団地だけで、他にあるのは駐車場くらいである。
すぐに折り返しの列車に乗ってもよいくらい、部外者を寄せ付けない感じなのだが、せっかくなので付近を散策する。
陸橋の上から工場敷地を見ると、歩道に「Utsunomiya St.」とある。
路線バスの乗り場かと思い、陸橋から降りて近づいてみると、確かにバス停があるが、IDカードがないと乗れないと記してある。
工場従事者の通勤のためのバスのようだ。
警備員が近づいてきて、「工場の方ですか」と声をかけられる。
違う、と答えると、「ここは敷地内ですので」と注意され、退散する。

大谷石を台とする椅子に座って待ち、1本後の電車に乗り、元来た道を戻る。
見ていると、現金で運賃を支払う乗客はほとんどいない。
現金の支払いが遅延の原因との報道があったが、開業直後、とりあえず乗った客や子供客が現金で支払っていたのではなかろうか。
一方で、ICカードリーダーへのタッチを誤る客がいて、その客は降りる際に入場のリーダーにタッチしていた。
よく見ればわかるのだろうが、間違っても仕方ないかとも思う。
そういえば、終点に行くときに、ある客から「観光できたのでよくわからないのですが、○○から乗った場合いくら払えばいいかは、運賃表のどこを見ればいいですか」と尋ねられた。
僕も市外の客なのだが、「バスと同じです」と答えて、その場をしのいだ。

国道の陸橋を超えた後、宇都宮駅から2つ手前の停留場で降りる。
通りを歩くと、架線のうっとうしさもなく、整備された街並みである。
通りにバス停があったが、LRT開業とともにバス路線は廃止、整理されたらしい。

駅のロータリーを出入りするあたりで、LRTが止まっている。
車との衝突があったらしい。
まさに、行くときに「危険」と感じた場所であり、行きで乗った「308編成」の先頭部に擦過傷が入っている。
車の運転手も、電車の乗客乗員も、けがを負っていないようだが、電車は立ち往生しており、おそらく他の電車も抑止がかかっているだろう。
あの軌道を横切る方向の道路は、早晩廃止されるのではないかと思う。

リアルタイム検索をすると、事故現場の写真がもう上げられている。
ドライバーの属性についての情報も得られる。
事故は極力避けられるべきだとは思うが、やむを得ず事故が起きると、注目度の高い今だとこうやって取り上げられてしまう。
情報を伝えるのが、一般人なのか、マスメディアなのかの境目がなく、同じ力を持つのだから何かしらのポリシーが必要かと感じる。
僕もここに来る今日だけで、電車に乗る際に入り口で頭を強打したり、ボタンで開閉する電車のドアの前で立ち尽くしたり、工場敷地への侵入を咎められたりしており、それらの姿がネットにさらされることを考えると、憂鬱である。

昼は、迷いなく餃子。
新しく建てられた施設の店で食事。
焼き3、水1、揚げ1で、1.6K円。
4年ぶりに来た店は値上げしているのだが、それでも安く、そして満腹。

西口の方へ行く。
大谷石記念館へ足を延ばそうか、とも思ったが、西側整備区間が完成してからでいいか、と思い直し、思川を越え、重い歩を西へと進める。
事前知識があったから、「シウマイ餃子ライン」を見てもそんなに驚かない。
今日も暑い。

東側と比べると、以前からにぎわっているはずの駅西側がなぜか猥雑に見えてくる。
ところどころ残されている古い家屋、行き詰った感のあるビルの排熱、ホストの看板。
オリオン通りを歩き、「「ウチくる!?」で八反安未果が来ていたな」と、使い道のない記憶がよみがえる。
昼間だからだろうか、人がほとんどおらず、黒崎のことを思い出す。
暇のなくなった中年女性が歩いていないのが、地方都市の衰退の一因か、と思い当たる。
オリオン通りを少し外れたところに、映画館がある。
ヒカリ座という名前で、事前知識がないとなかなか入る勇気の持てないたたずまいである。
そういえば、黒崎で「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」か何かを見に行った気がする。
どういうタイミングで見に行ったのかも覚えていないが、あの時が黒崎メイトに行った最後だと思う。

映画のポスターが貼ってあり、「二十歳に還りたい。」とある。
僕は過去にはどうしても戻りたくはないのだが、もし30歳より前に戻らなければならないとするならば、高校に入学した年の夏時点くらいならかろうじて受け入れられる。
あの、冷たい夏だ。
小学生や中学生に戻るのはうんざりするし、高校卒業後だと取り返しのつかないことが多すぎる。
高校も煩わしく忌々しい出来事ばかりだったが、自分のだらしなさが起因する点も多く、まだ手の施しようがある。

もし戻ったら、ビデオデッキを購入し、まじめにTVを見る。
秋でもいいのだが、せっかくならその年の「FNSの日」を見たいので、夏に戻りたい。
そして、東京へ抜けだすことを主軸において高校生活を送る。
ちゃんと英語を勉強するし、英単語のテストで25問中24問も間違えるようなこともしない。
読書もするし、古典もマンガであらすじをさらう。
その後は、自分に土木工学の素地が残っているとするなら、計算機科学を専攻する。
高校卒業以降の周囲の顔触れは全く変わってしまうだろうが、それは受け入れ、周りの人たちとのつながりを尊重する。
何者にもなれないことを早く悟り、目の前のことを1つ1つ丁寧にこなす。
結局今いる場所にたどり着きそうだが、苦労は少なくなるはずだし、資産も厚くなることを期待してもいいだおう。
迷惑をかけることも少なく、みっともないこともなくなっていればいい。

という、指導者の置き土産がもたらしたくだらない妄想とともに一通り歩いて、時間もないので、東武百貨店の地下で冷凍餃子を買い込み、東武宇都宮駅。
新栃木駅で乗り換えて、普通列車。
ふと、先日行きそびれた「3県境」に行ってみよう、と思いつく。

柳生駅で下車。
駅から徒歩10分のところにあるようだ。
住宅地の先に、青々とした田園が広がり、稲の香りが心地よく感じる。
都会が好きな気もちに変化はないが、さっき見たような地方都市が好きかどうかは、疑問だ。
それよりも、田園風景の方が落ち着く、と考えるようになった自分に気付き、驚く。
でも、それはもともとあった感覚だ。
確かに徒歩10分で「3県境」に到着し、3歩で3県を回る。
思えば、今日宇都宮に行くだけで、5都県ほど足を踏み入れており、なんとも大げさな感じがする。
徒歩10分で駅に戻ると、汗がすごい。
ドライアイスを仕込んでもらった冷凍餃子が心配になる。
いずれにせよ、東武日光線の普通列車に乗り、30分間隔で来る1本後の列車に乗ってもいいか、と考える好事家には、3県境はぜひおすすめしたいスポットである。

帰りのラジオは、「SAYONARA シティーボーイズ」。
タイトルからしてショックなのだが、自分の年齢を考えろ、ということなのだろう。

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