曇天の続き

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2023-08-14 Mon.

夏空

2023-08-14

「ファミリーヒストリー」(NHK)草刈正雄回を視聴。

高校野球中継番組の合間に流れた番組予告で放送を知った。
絶対に見なければならない、なぜなら僕は小倉の人間だからであり、小倉で最もハンサムな人物が取り上げられるからである。
「東映会館でも映るんかね」ぐらいにしか思っていなかった。

番組の紹介文を見て、声を上げた。
草刈正雄の父親が10年前まで生存していた、と書いてある。

実際に番組を見ても、知らなかった事実に呆然とするばかりで、言葉をのんだ。

まず、小倉市民として、である。
郷土が輩出した名優の父親はアメリカ軍人であり消息不明である、というのは、厳然とした事実として広く知られてきた。
小倉の歴史を抱えている市民である僕は、「この話はこれで終わり、追求するは必要はなし」として扱ってきた感がある。
それが、本人も知らないことが知らされ、実際には異なっていたことがわかったのだから、唖然とした。

同時に、芸能界史としても、重大な事実となった。
本人の口から長年語られてきた「父親は朝鮮戦争で戦死した」という話が、思いもしない形で覆ったのだから。
十分に長いキャリアを持つ俳優の十分に共有されていたことについて、新たな事実が判明した、ということに、多くの視聴者が衝撃を受けたことだろう。

そして、これに最も驚いたのだが、アメリカの情報化事情である。
カタカナ表記でしかわからない姓名、陸海のどちらに所属していたかは不明であるもの軍人であり日本に駐留していたこと、ある程度の生年、本人の父親が郵便局員であったらしいこと、さらに、若いころの草刈正雄のインタビューから推定される出身地。
この程度の情報で、消息をたどることができた。

もちろん、これらの手がかりだけでは、かなり苦戦したことだろう。
実際、「スペルのバリエーションから、20万人ほどの可能性がある」というようなことが途中で言及されていた。
その可能性を1つ1つつぶすには膨大な時間と手間がかかった、と想像できる。

それでも、調べる手立てが整備されているのは極めて強力だ。
なぜなら、後は時間をかけることさえできれば、いずれ目標物にたどり着くことができるからだ。

これも、データが電子化されているから、なせる業だ。

たとえ軍人・軍属の記録が残っていようと、紙をめくって探すのと、キーボードをたたいて探すのでは、全く異なる。
現状は1つずつ見ていく必要があるだろうが、電子化されているなら、いずれは、探索のプログラミング化、自動化も期待できる。
紙の記録のままでは、まず無理だ。

とても追いつくことのできないほどに豊かな情報化社会が、アメリカでは実現している。

今回は、70年も昔のことが現在とぎりぎりで結びついて、事実が判明した。
タイミングにも恵まれた、奇跡とも呼べるものであった。
結果を受け止めることは、当事者がするものだ。
異国の地で過去を抱え込んだ人たちを含めた救いになれば、と祈るのみだ。

視聴者としてはただただ驚いたまま、番組が終わった。
同じ番組にもかかわらず、高橋克実回と、視聴後感が全く異なる。

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