静隠
雨、である。
開場を待って、温泉を堪能。
朝食は、本来はブッフェなのだが、この時期なので持ってきてもらうスタイル。
全種類の料理を取り分けていただいているようで、とても食べつくせない量だ。
今回の旅行の最大の目的は、崎津である。
旅行前に、遠藤周作「沈黙」を読む。
「沈黙」の意味を、恥ずかしながらこの歳で知る。
モチーフは悲惨なのだが、遠藤周作の作品はどれも、どこかユーモアというか、共感というか、そういうものがあって、苦しい読了感にはならない。
スコセッシの映画を見ることは、しばらくはないだろう。
崎津までは、市街地から車で1時間ほどかかる。
もう一度言うが、雨の中、レンタカーを運転。
ワイパーをフル稼働してもはっきり見えない車窓、灰色の海。
飛行機を乗り継いでまでして天草に来たのに、何をしに来たのかよくわからない。
崎津に到着。
雨で心が折れそうになるが、東京からの距離を思い出し、気力を振り絞る。
熊本の豪雨による天草の被害は少ないようだが、それでも牛深のほうでは土砂崩れが起きている。
事前に「ブラタモリ」を見てきたので、見覚えのある景色をいくつか見た。
崎津教会は、教会なので、肌の露出は控えめに。
荒天にめげることなく、たくさん写真を撮る。
1時間かけて、市街地に戻る。
崎津の他に観光はしない。
観光をしていたら、熊本発の新幹線に間に合わないし、小倉での夕食にも間に合わない。
景色を見るだけでいいではないか、と思っていたが、景色を失った天草は旅人には酷だ。
事前に調べておいた、海老料理店で昼食。
値段に躊躇せず、海老尽くしを注文。
踊り食い、塩焼き、天ぷら、煮物、茶碗蒸しをいただき、雨のことを忘れたが、店を出るとやっぱり激しい雨である。
いくつかの道の駅に寄り、天草五橋を渡り、三角線と並行して車を走らせ、熊本駅に到着。
12年ぶりの旅先でのドライブだったが、雨以外、特に記憶はない。
帰宅して、天草五橋を走破しているYouTubeをTVで見よう、と決意。
熊本駅に来たのはおよそ30年ぶり。
新幹線が開通し、新駅舎になってからは当然初めて。
路面電車を見に行くと、「努力は実る」が来熊歓迎。
駅ビルにはラーメン屋があり、気を抜くと入店しそうになるが、いきなり団子で我慢する。
9分遅れで新幹線が出発。
チケットはJR九州のウェブサイトで購入し、博多までの運賃・料金は半額くらいになった。
18時過ぎに小倉に到着。
今年は、祇園太鼓の音が聞こえない夏である。
実家では、家族が待ち構えており、すぐに食事。
刺身をいただくと、親から注意を受ける。
よく見ると、取り箸が用意されており、みんなそれを使って自分の皿に取り分けていた。
相変わらず、周りが何も見えていなくて、情けない。
刺身に夢中になること1時間、父に「そういえば、お前は仏壇に手を合わせたのか」と指摘される。
今回の帰省で最大のテーマであったのに、すっかり忘れてしまっていて、情けなく情けない。