曇天の続き

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2017-06-30 Fri.

周行

2017-06-30

今月は、矢部みほ生誕40周年の月である。

さて、この10年のことを思い返してみようと思う。
…と思ったのだが、少し時間があったので、直近30年間の各年の記憶をたどり、現時点の僕がその時のことをどう思うか、改めて確認してみた。

最初の10年、つまり小倉にいた10年ということになるが、簡潔に言うと何も楽しいこともなく、自分の身を不要に拘束していたために全く自由ではなかった。
他人との思い出で、ポジティブな感情を持てるものは、少なくとも僕の頭の中には何もない。
当時関わった人のうちに、いい思い出とともに僕を記憶している人はいないと断言できるし、そもそも悪い思い出でも何でもいいとしても、僕を覚えている人はほとんどいないと思う。
わかりあえる人はごくわずかだったし、そのごくわずかな人たちともまともに向き合わず、人としての振る舞いは礼を失するものだった。

夢中になって打ち込んだ事物もない。
関心の向かい先を思い出せば、TVと交通とITぐらい。
確かに、お笑いや映画が好きだったり、地図を見るのが好きだったり、プログラミングが好きだったりしたけど、それらは単なる興味としか考えておらず、のめりこむほどではなかった。
それゆえか、具体的な記憶が一切伴わない。
何の生きがいも感じることなく、本当によく生き延びたものだと思う。
その時にもっと英語を勉強し、本を読んでいればよかった、と後悔しているのは事実だが、あの頃をもう1度やり直すくらいなら、今から取り組む方を選択する。
2度と戻りたくない時期だし、小倉にいたままでは不自由さで悶死していたかもしれない。

次の10年、つまり東京に出てきてからの10年であるが、その10年も変わらずに不自由だった。
したいことは何となくわかってきたけど、機会を自ら作ることに躊躇し、能力も足りず、金もなかった。
この期間の興味は、TVと旅行とIT。
ちなみに、僕は20年前の6月に、まずは川本真琴のファーストアルバムを購入した、と日誌に書いてあった。
映画「だいじょうぶ、マイフレンド」を見た、とも書いてあって、今も20年前もやっていることの種類は何も変わらないし、誰にも共感されないわけだ、と落ち込んだ。
そもそも、何を意図してそんなことをしていたのか、今の自分でも理解に苦しむ。

そして、直近の10年。
自分が変わり者であることを素直に認容し、周囲にもそうであることを、そこはかとなく伝えることにしてきた。
いわゆる「世間体」を気にしなければとても楽だけど、度が過ぎると周囲の調和を乱すこともある。
そのバランスを見極めることに、心を砕いた。
その結果、多くのことを手放し、後ろ指をさされることになり、さされた後ろ指を受け入れることになったと思う。

結局のところ、僕は基本的に独りでいたいし、本を読んで、音楽を聴いて、映画やお笑いを見て、芸能ゴシップを仕入れていれば、それで満たされるのだ、と気づいた。
そして、街を散歩して、喫茶店で休んで、やきとりやラーメンを食べて、時々旅に出ることを独りでできれば、それで楽しめる。
時々でいいから、人の話で大笑いし、相手を尊重する笑い話をして、他人に感謝を伝えるために必要な関係を温めていれば、人とのかかわりは十分である。

以上を実現するために、毎日能力を磨いて、得意とする分野にしがみつき、頼まれた仕事をこなし、世間のルールを遵守して、資金のみならず時間や信頼などの資産を蓄積する、という制約条件のクリアを続けようとしてきた。
それが、この10年である。
うまくいかないことばかりだったが、一方で明日は来てしまうので、持っている経験を駆使してしのがざるを得なかった。
そういうものにわたしはなりたいし、時代おくれの男になりたい。

さて、この30年を振り返ってみたのだが、出来事をほとんど思い出せない年があった。
それは、つい最近の2015年である。
上野東京ラインの開通を喜び、沼津へ日帰り旅行をし、結婚発表前の土岐麻子のライブに行き、ノロウィルスによると思われる胃腸炎にかかったことしか思い出せない。
改めて日誌を見返しても、「ああ、あの中華料理屋に初めて行ったのは2015年だったか」というくらいの発見しかなかった。
まあ2015年にやっていたことが2016年につながり、今もそれで何とか食いつないでいる、と言えるところもあるので、無駄な1年とは決して言えないのだが。

周囲を制御し、というより周囲から距離を置き、平穏な時を過ごす術を身に着けることにより、記憶に残らない年が刻まれるのだ。
それは事故が起きなかったからこそ得られた幸運である。
今後も、そんな年が増えていくことこそ幸福だと認識し、慎重に行動しよう。

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