催民
ハロフソメンバーである。
ハロウィン普及阻止活動を実践している身としては、2023年はエポックメイキングな年となった。
「ハロウィンを楽しむために渋谷に来ることはやめてほしい」と区長が言い、実際当日の来訪者数が減ったのだ。
「我が国の大衆は、出費なく確実に小金を得る行動と、お上の要請に沿う行動を率先して実施する」というのが、ここ数年の業務から得た定説である。
僕が見える範囲では、ハロウィンの仮装は幼児とインスタジェニックだけのものとなった。
仮装して盛り上がりたい人に、朗報である。
成人の日に北九州市に行けばよろしい。
現市長は、成人式の盛装を「観光資源」にしようとしているから、大歓迎であろう。
僕の実家の近くでなく、人権を尊重し、狼藉を働かないのであれば、ぜひどうぞ。
高橋みなみとクロちゃんも、北九州へ日帰りで行っていた。
もちろん「ニューヨーク・ファッション・ウィーク」はすごいと思う。
ところで、ハロウィン当日、僕は外出していた。
新宿で用事を済ませ、靖国通りをとぼとぼと歩いていた。
新宿の喧騒を後にし、富久町のタワーマンションに嘆息し、起伏ある地形に驚嘆し、自分に呆れる。
防衛省の前を通るのはこれで2回目だろうが、書物でよく見る「丘」の描写を改めて感じさせるたたずまいである。
後で調べると、防衛省内を案内するツアーをやっているようで、今後行ってみたい。
周囲に制服組のコスチュームはいなかったが、僕は比較的背広組の格好をしていた。
夕方に開いているもつ焼き屋に入り、ビールとレモンサワーを飲んだ。
店内のTVはテレビ東京に合わせてあって、「午後のロードショー」を映していたが、映画の内容は全くわからなかった。
そのあと「よじごじDays」が始まった。
株式市況は地上波ではもうやっていないようだ。
田端や谷中あたりの七福神をめぐる、という企画をやっていて、元・号泣の人と陰陽師が出ていた。
MCは、元RKBアナウンサーと野球芸人で、野球芸人は、僕の知らないところで長いことMCの座を守っているようだ。
てっきり柴俊夫とか大島さと子とか草野満代とかが司会をしているものだと思っていたので、すっかり時代遅れである。
「L4セレクション」をやってなくて「なぜだ…」とつぶやき、その代わりにジャパネットテレビショッピングが内包されていて、生放送のやり取りの後、事前録画された映像が出てきて、各地の名物食材が毎月送られてくる商品が紹介されていた。
スキップできたり、同じものを追加で注文できたり、きめ細かいサービスに感心する。
番組の途中で店を出たが、番組開始からしばらく「よじ」にならなかったし、「ごじ」になる前に番組は終わったようだ。
店を出て気づいたが、僕はもつ焼き屋に行きたかったのではなく、焼鳥屋に行きたかったみたい。
以前から気になっていた店に行こうとしていたのだが、直前にウェブで得た情報だと、僕が望んでいる業態とは少し違っていた。
小倉で思い切って買った大きめのうに瓶とほぼ同じ金額が時間制でかかるらしく、あやうく無駄な金を使うところだった。
この話を人にしたところ、「最近は、女子大生が店でドンペリを飲まされ気を失い、後で150万請求されたケースがあったようだ」との「実話系実話」がもたらされた。
どこも景気が悪いようである。
靖国通りにあった看板に「顔出しなしで億を稼ぐ」とあったが、この話を聞くと、回収できていない売掛金も含まれているのか、とすら思う。
それにしても、いつの間にかホストの大きな看板が街に目立つようになってきた。
それで、別の店を探して、開店時間までもつ焼き屋で時間をつぶしていたのだが、行ってみても開いていない。
また別の店を探すことも考えたが、おっくうになり、ひとまずコーヒーショップに入り考え事をすることにする。
いつもは入らないコーヒーショップで、いつもの値段の倍はするコーヒーを頼み、飲んでみたけど、いつものコーヒーの方がおいしい。
別に店の雰囲気がいいわけでもなく、これでまた1つ、行かない店が増えた。
時間が空いても、外ですることはない。
せいぜい散歩と食事と映画くらいだ。
ということで、映画でも見ることにする。
アプリで探して、いい時間に「ドミノ」という映画がかかっていることがわかり、よく調べていないが見に行くことにした。
映画の料金は、2,000円である。
180円でコーヒーを飲み、280円で牛丼を食べ、チケットショップを回って800円で映画を見ていた世代である。
今はまだ金があり、今のところ逃げおおせている運に感謝するしかない。
上記の女子大生を含め、現代の大学生には深く同情するけど、金は出せない。
「ドミノ」は、びっくりする映画だった。
「冒頭5秒、すでに騙される」というキャッチコピーを見てしまったのが悪かったのか、だまされている感じがまるでしなかった。
それがそうならそうだろう、という感じだったし、それがアリだったら何が起きてもアリだろう、という内容だった。
途中で、ものまね王座決定戦のことを思い出したのだが、正確には東京オリンピックのジャケットのことを思い出すべきだったのだろう。
スケールが小さくまとまったのはロバート・ロドリゲス監督も不本意だったようだが、後でウェブサイトのレビューで見た「「午後のロードショー」で見るにはちょうどいい」というのに、十分共感した。
もつ焼き屋のTVで見るのが、いいのかもしれない。
帰り道、2,000円のことばかり考えていた。
行こうとしていた店は開店していたが、時間も遅かったので、また今度にする。
街は、酔っ払いのコスチュームでにぎわい、いつもと変わらないように見えた。