賽子
生放送を見ただけの現時点の「M-1グランプリ 2022」の感想を。
その前に、いつも言っていることを。
順位は問題にしていない。
重視しているのは、優勝と、決勝進出だけ。
2位とか、最下位とか、最終決戦出場とかは、観測誤差みたいなものだ。
決勝進出は、それだけで十分評価されていい。
それ以上にあるのは、優勝だけ。
もう1つは、点数も気にしていない。
点差に意味がある。
そこは審査員でそろえてほしいし、最高と最低で10点くらいに収まっていることが望ましい。
できれば、点差が等しくあってほしく、それで言うと2022年のR-1のバカリズムの審査が理想である。
今回の結果には、全く異存がない。
優勝はどちらか2組であったし、どちらになっても文句はなかった。
ただ、自分としてはやはりさや香には失速感があったので、ウエストランドであってほしいな、とは思った。
それでも、結果が出た時には呆然とした。
「まだ言っているのか」という感じだが、吉本主催の大会で、関西の漫才師の1本目が出色の出来で、優勝させても批判は全くない結果だったにもかかわらず、そして2年連続で他事務所であっても、そっちを優勝にするのか。
しかも、ウエストランドに戴冠させるのか、と。
僕は、2000年代半ばに「M-1は、関西芸人のサーガである」と理解していたのだが、今回は「お笑い芸全体のサーガだった」という印象だ。
本当に「本当の大会」だったのか、と改めて思い知らされた。
僕は、この2年くらいはロングコートダディを応援していて、最終決戦まで残ったのは、知名度向上の点でうれしい。
しかしながら、たまたまというか、男性ブランコか真空ジェシカのどちらか最終決戦に残ってもおかしくなかった、とは思った。
改めて、笑神籤の恐ろしさを知った。
カベポスターは、ネタ順が違えば、もっと印象に残っていただろう。
9番目のキュウは、10番目のウエストランドの十分なお膳立てになった。
2020年大会で井口さんの達者ぶりが際立っていて、改めてウエストランドを見直した。
相方がどれだけポンコツでも、漫才をここまで引き上げることができるか、と。
だから、もはやさや香の優勝は決まったものの、ウエストランドの評価を刷新してもらいたく、10番目に出て来たときは「ひっかきまわせ、爪痕を残せ」とTVの前で声をかけた。
最終決戦に残っただけでも十分うれしかったが、それ以上があるのは、本当に想像していなかった。
以前から感じているが、言葉遊びネタは、理解させるのが難しい。
ダイヤモンドがやった、いわゆる「レトロニム」のようなものは、僕は以前から興味があるのだが、それをネタにすると、見ている方は笑うために頭を使う。
とはいえ、敗者復活でやったシンクロニシティのような例もあるから、一概にダメとは言えない。
すゑひろがりずのような感じであれば、フレームが明確なのでわかりやすいのだろう。
キュウが言葉遊びとゲームのつなぎのようなことをやって、それがウエストランドにつながっていくのだから、これもよくできている。
決勝で結果を残せなかった組も確かにいた。
しかしながら、キャリアの早い段階で大舞台での敗北を経験するのは、今後大きな財産になる。
決勝の残っている時点でどの漫才師もおもしろいわけで、当日はどうしても「流れ」という観点で見てしまっている。
その点で、M-1は笑神籤に支配されてしまった。
一方で、敗者復活戦は、本当に「敗者の復活」に終わってしまっている。
準決勝で実力で落ちた組が、人気で勝ち上がる、という状況がここ数年続いている。
当然その日の調子があるので、実力のある組がたまたま準決勝で落ち、敗者復活で救済されるケースもあるのだろう。
それでもやはり、知名度で勝ち上がるのは、見ていて無残である。
もう実力は十分知られているのだから、たとえば決勝進出者は敗者復活の権利を失う、とかでもいいのではないか。
本心を言うと、やはり国民投票はやめるべきだ。
視聴者はすべてをフラットに見ている環境にないし、僕もハイツ友の会の時に中断が入って、よく見られなかった。
だから投票の資格がないのかもしれないが、僕は、令和ロマン、ダンビラムーチョ、マユリカに投票した。
ママタルト、ケビンス、ヤーレンズの今後に期待する。
2022年は、NUMBERで「M-1」が取り上げられ、ABCは「M-1はスポーツだ」とついに開き直ってしまった。
僕は、お笑いから得るものは当然あるものの、それは傍流であると思う。
お笑いはただただくだらないものであってほしく、エンタテインメントに過ぎない。
賞レースを中心に考えている芸人の、いったい何が面白いのだろう。
ウエストランドが放送局の目論見をぶち壊してくれたのなら、溜飲が下がる。