想旅
もう2か月くらい、休日の外出を制限していることになった。
改めて、自由に出かけていたことのありがたさ、大切さを思う。
僕は今後ますます、したいことを正確に把握し、自分の時間を大切にするようになるのだろう。
「協調性がない」とそしられ、望んでいない孤立を選び、単調な生活を送ることになるのだろう。
「毎年最低1か所は鉄道の未乗区間をつぶしていこう」と決め、それを実行してきた。
振り返ると、2011年からその取り組みができていたようだ。
その前の年、2010年は余裕がなくて、ほとんど動けていなかった。
年末に、上原ひろみのライブで初台へ行った際に乗った、都営大江戸線の新宿西口-西新宿五丁目がそれまでの未乗区間だったかもしれないが、たぶんそれ以前にもこの区間に乗ったことがあったように思う。
2011年はあまりにも時間を持て余しており、重い腰を上げて東京近郊区間の大回り乗車をやってみた。
それ以降は旅行の際に自然に未乗区間がつぶれたし、2016年には23区内完乗を始めて、未乗区間が解消され続けた。
このままの状態が続けば、今年は未乗区間を消化しないまま、年が終わるかもしれない。
年初、春の大型連休中に出かける旅行の計画を立てていた。
伊豆半島の下田への日帰り旅行。
乗ったことのない伊東線、伊豆急行線に乗り下田、バスで修善寺に移動し、駿豆線に乗って、三島から帰るという計画。
現実的な時間内で帰るためには、ほとんど列車に乗っているだけのスケジュールになるのだが、それでもコンパクトな計画を立てることができ、あとは実行するのみだった。
今後時間が経てば移動の自由は得られるのだろうが、その時に自分がその自由を謳歌できる立場にあるのか、それが不安だ。
旅に出られないストレスは強く、暇があれば、地図と時刻表を見ている。
国内だと、これまでに本土46都道府県に足を踏み入れた。
一方で、県庁所在地を訪れていないのは、あと12県ある。
秋田、山形、新潟、山梨、長野、三重、岐阜、岡山、島根、山口、宮崎、そして沖縄である。
このうち、岐阜、岡山は県内を素通りしただけであり、沖縄は県内に入ったこともない。
いつかこれらの土地を訪れる日のために、旅行の計画を粗く立ててみよう。
秋田を訪れるのなら、弘前にも行きたい。
男鹿半島経由で行くか、秋田縦貫鉄道経由で行くかで悩む。
弘前から津軽鉄道まで足を伸ばし、帰りは奥津軽いまべつから北海道新幹線でどちらかの方向に行く。
あるいは、帰路に八戸から三陸リアス線を完走する余裕があればよい。
山形に行く際には、以前断念した常磐線縦走を果たしたい。
仙台で一泊し、山寺を訪れて、山形へ。
米沢から米坂線で羽越本線に出て、新潟を回って戻ってくる。
あるいは、戻らずに小千谷から飯山線で長野に回り、そこから上田、小諸を通って、小海線。
甲府に寄って、身延線経由で戻ってくる、というのも魅力的だ。
山形に行った人間が、富士山の向こうから戻ってきた、というのは、何ともばかばかしく、誰も相手にしてくれそうにない。
岐阜に向かうには、まずは中央本線に乗ろう。
木曽路を経て、高蔵寺から愛知環状鉄道に乗り、岡崎。
そこから名鉄特急で中部国際空港に出て、船で津を目指す。
そして、養老鉄道か名鉄線で岐阜に入る。
帰りは、高山本線で北上し、富山から北陸新幹線。
いや、立山・黒部アルペンルート経由でもよい。
松江には、サンライズ出雲だ。
松江城を見た後、宍道に回り木次線、芸備線。
時間に余裕があれば、姫新線で津山まで出て、交通の要衝をしのびたい。
姫路まで出た後、赤穂線で、岡山、そして倉敷。
瀬戸大橋を渡り、多度津から土讃線。
箸蔵から佃への雄大な景色を眺め、高知に出て帰路に着く。
サンライズ瀬戸で帰ってくるのもありだ。
山口を訪れるのは難しい。
東京からは遠い。
地元からは近いわりに、海峡を挟んだだけなのに遠く感じて、下関くらいしか行っていない。
そして、山陰路を行くのは、想像以上に苦行である。
それならば、萩・石見空港から、益田に出て、山口線を行く。
まだ訪れていない津和野を散策し、山口市を抜ける。
ついでに、宇部線、小野田線を消化して、実家に帰る。
萩も魅力的だが、その場合は、長門市から仙崎、美祢線経由で実家に帰る。
こうすると、山口市内に寄らないことになり、目的を達しない。
最も難しいのは、宮崎だ。
宮崎は、延岡、高千穂、都城、霧島、小林には行っていて、宮崎市内が残された格好となった。
思いつくのは、日南に寄った後、西米良から湯前へバスで抜け、人吉経由で熊本へ至る、という行程。
那覇は、沖縄に行けば済む。
とりあえず、沖縄都市モノレールを完乗しておこう。
それでも飽き足りなければ、石垣を経て、台湾に渡る、というのもいい。
以上の通り、あと7回ほど旅に出れば、47都道府県の県庁所在地に足を踏み入れることができる。
これらを1つ1つ「実装」、つまり行程に落としていくだけでも、しばらくは暇をつぶせることだろう。
今回の騒動で、ヨーロッパに行く気力が失せてしまったので、まだしばらくは国内を楽しむことになりそうだ。
それにしても、旅費は何とかなるとしても、時間と体力と、旅を楽しむための知識、そして身軽さが圧倒的に足りない。
知識が追いつくことはないので、体力のあるうちに、時間を捻出して旅を強行し、後で無知を悔いることになるのかと思う。