訪横
横浜へ行く。
2019年4回目の横浜。
今年は、例年に比べ、横浜に行く機会が多かった。
朝の電車で向かったのだが、上り電車は都心を離れるころにはすいており、座席にも空きがあるくらいだ。
僕は、隣に人がいない席に座り「森毅ベストエッセイ」を読む。
本に出てくる「自分の休日」というのが、まさに今日である。
横浜は程よく遠い。
ちょっと遠出をして別の街に行きたい、というときに、適切である。
同じくらいの距離とはいえ、朝目覚めて、「今日は、大宮に気分転換に行くか」「船橋でリフレッシュだ」というのは、陽光の下にさらしてはならないセリフのように思える。
東京に飽きてきたらしく、交通費も気にならなくなった最近、「今度は春日部でも行ってみるか」と思い、はっと我に返ってその思いを瞬殺した自分は、きっと調子が悪かったのだろう。
桜木町駅で降り、みなとみらい方面を目指す。
1月のICEのライブに行った際、伊勢佐木町を見て、「横浜は、なんと豊かな街なのだろう」と感激した。
小倉から出てきて、横浜に行ったことは数えるほどしかなく、横浜のことをほとんど何も知らない自分に気づいた。
つい最近、横浜の中心部にほど近い場所に育った人と仕事をするようになった。
その人曰く、「立川って、埼玉ですよね」「大宮と浦和、どっちが手前ですか」「最近、ようやく山手線に乗るようになった」「千葉は、舞浜までしか行ったことがない」。
首都圏の路線図に行動範囲を示してもらうと、ほぼ横浜から数駅を囲むのみで、ほとんどの用事は横浜で事足りるそうだ。
勢いに任せて「鶴見が遠い、ところで鶴見は川崎ですよね」という始末。
その新鮮な感覚を目の当たりにして、「そのままでいてくれ、その感覚を教えてくれ」と楽しんでいる。
やはり僕たちは、退路を断って人生を賭場にさらした、みっともない上京者である。
しばらく歩いて、マクドナルドを発見し、遅めの朝食。
年末の楽しみ、2019年を振り返り、2020年のことを思う。
1時間ほど逡巡し、店を出て、横浜美術館。
おそらく、20年ぶりだと思う。
企画展とコレクション展を一通り見る。
開国直後から20世紀初頭にかけての横浜を描いた一連の作品に、特に目が行く。
さみしい漁村だった地に、異国の大型船がやってくるようになったら、それは楽しいだろうな、と海峡出身者は思う。
美術館を出て、横浜駅まで歩く。
途中、2019年秋に稼働した、京急の本社前を通る。
1月には「京急ミュージアム」が開設される。
そこから少し歩くと、「原鉄道模型博物館」がある。
この地の難点の1つは、冬に訪れると寒風がこたえる、という点である。
ポルタに降りて、昼食。
担々麺と麻婆豆腐丼を食べ、満足。
そのあとカフェに入り、仕事をして、夕方になったので、電車に乗って帰る。
朝思ったのだが、2020年は、横浜に出かける機会を増やそう。
東京のことは、放っておいても人が群がってくるだろうし。