刻刻
2017年ごろからビットコインの値が急騰し、かと思えば急落し、という動きを見せていた。
僕も以前、ビットコインを購入した。
2018年初頭、自分がビットコインを保有しており、価値が3倍くらいになったことを周囲に言いふらした。
周囲は、先見の明があるような印象を勝手に持ったようだ。
中には、僕の資産が倍になったと信じ、羨望のまなざしを投げる者もいる。
もちろん、そんなことは言っていない。
購入した目的は、仮想通貨…、暗号資産に対するリテラシーを身に着けることだった。
なので、購入額は、各種ポイントシステムで得た利益の一部をあてただけの、いわば「捨て金」程度だ。
でも、価値が数倍になったのは事実なのだから、こちらから否定する必要はない。
少額なので、自分の小遣い帳からは残高を外していた。
値動きや損益を見ることはなく、急落した頃からしばらく放置していた。
それが近頃、以前つけた高値を取り戻しつつある。
持っていると、また変な考えが沸き上がってくるかもしれない。
そこで、持っていたビットコインを一掃した。
ビックカメラで、腕時計を購入したのだ。
持っているビットコインでは全額を賄えなかったので、ポイントで補填した。
前回腕時計を買ったのは、およそ10年前である。
普段は腕時計を着けない。
左腕に着けた腕時計でノートPCの左端が傷つけられ、ボロボロになるのを見て、「自分は肉体労働者なのだ」と自覚し、腕時計を外した。
そもそも、時刻など気にする生活ではない。
時間に追われるようであれば、その生活態度を改めるべきである、と信じている。
それでも、腕時計は必要とするシーンが、僕には3つある。
1つは、叙勲パーティーなどに参加する時だ。
もし呼ばれるようなことがあれば、フォーマルな装いとして、それなりの腕時計を着用して出席することが望ましい。
そのための腕時計が欲しいと思うのだが、今のところ叙勲パーティーに招待される予定はないし、そもそも知人すらいないし、そもそも金がない。
次に、試験を受験する時である。
これまでの試験は、それこそ10年前に買ったソーラー電池の腕時計を持っていった。
しかし、ずいぶん前に時計の外縁に疵が入ってしまい、それがずっと気になっていた。
また、この時計は電波時計ではなく、時刻を合わせるのを面倒に思っていた。
3つ目は、旅行である。
僕の旅行は、交通手段を駆使するものであり、正確な現在時刻を知ることが重要となる。
旅行の時にも10年前に買った時計を持っていくが、同様の理由で電波時計が欲しかった。
今回購入したのは、試験用及び旅行用の腕時計となる。
以前からめぼしいものを探してはいたものの、適当な値段の適当な時計がなかった。
最もニーズに合っていたのが、カシオのwave ceptorであった。
値段が1万円の、ソーラー電池搭載電波時計となると、これがリーズナブルだった。
ただ、どうしても許せないところがあって、それは盤面に配された液晶表示だ。
時刻が数字で表示されるのはまだ許せるとして、曜日が漢字で「月」「火」と表示されるのが、控えめに言って「くそダサい」。
ただでさえ品格のない人間なのに、この腕時計を着けることで左腕が自分の品を地の底まで引きずり落とすような気がして、買う気になれなかった。
最近、その醜悪なデジタル表示を廃したモデルが出てきたので、今回はそれを購入した。
世界時計機能も備わっており、これでUTCで記録されたログを解析することになっても安心である。
電波時計を携帯して、気付いたことがある。
これまで、時刻の確認は、周囲に掲げられた時計で済ませてきた。
よく見れば街には多くの時計が備え付けられており、自分で時計を持つ必要はほとんどない。
ところが、電波時計と比べると、それらの時計の時刻はほとんど合っていない。
自分の電波時計と比較し、その不正確さを確認すると、ものすごくストレスがたまる。
もう1つ気付いたことがあり、それは、スマートフォンの時計機能についてである。
周囲に時計がない場合、当然ながらスマートフォンで時刻を確認してきた。
改めてスマートフォンの時刻を見ると、秒の表示がない。
スマートフォンで秒までの時刻を確認するのは、デフォルトの機能ではできない。
やむを得ず、秒までの時刻を確認できるアプリをインストールしてしまった。
ハードウェアがあっても、ソフトウェアがないとアクセスできないことがある。
さて、新たに入手した腕時計の秒針は、1秒ごとのステップ運針である。
数字の表示がないだけでこれを「アナログ時計」と呼んでいいものか、現在の大きな悩みだ。