名庭
テレビ東京の新しい社屋を見に行こう、と思い立つ。
たどり着いたのは六本木一丁目駅である。
そういえば、身近な誰かが南北線のすばらしさを熱弁していたのだが、誰が言っていたのか、どこを称賛していたのか、全く覚えていない。
僕の南北線の印象は、フルスクリーンドアに挫折し、8両編成に挫折し、乗り場屋出口を目指し通路を進むも地上だとどの辺を歩いているのか、という疑問が解明できず、時々遺跡にぶつかり、あの駅のどこが大学前なのだ、と憤る、埼玉と城南を結ぶ路線である。
いや、シールド工法はすごいのだけど。
新社屋は六本木グランドタワー内にある。
賃貸であることが素晴らしい。
テレ東本舗を観察し、ナナナのノートを買う。
最近は、クリアファイルに加えて、A5ノートを収集するのが趣味である。
謎のコンビニエンスストア、リーベンハウスを確認。
入居者はきっと、メジャーコンビニを熱望しているだろう。
地上に出て、泉ガーデンタワーのエレベータを確認し、麻布通りを歩く。
港区は坂の街である。
鉄道で移動している生活者、およびこの辺には全く縁のない人、つまり僕のことだが、この高低差を見るだけで心が砕ける。
ましてや、都心環状線が道路にめり込んでいるところを見ると、力が抜ける。
東洋英和の方に抜けると、スヌーピーミュージアムがあった。
入り口だけうかがうものの、ストアに入るにも入場料が必要とのこと。
貧乏人は別の機会を設けることにする。
鳥居坂を下る。
季節は夏の終わりに差しかかっている…。
もしかして、麻布十番祭りの時期ではないか!
僕の生活に度重なりフェイドインしてくるものども、その代表がスガシカオと麻布十番祭りである。
どちらも、特にラジオを聴いていると、するっとその名前が入ってくる。
どちらも、よく働いている証拠だろう。
それはともかく、名前だけ聞くが絶対に行くことはないのが、麻布十番祭りである。
もしかしたら、今日やっているのではないか、ついに麻布十番祭りデビューか…。
麻布十番祭りは来週だった。
そもそも、僕が最も嫌いな概念の1つが「祭り」であった。
誰でもいいから…、浴衣の似合う妙齢の女性なら誰でもいいから、麻布十番祭りに誘ってくれないだろうか。
かき氷くらいなら、選ぶという行為を積極的に楽しみ、食べる。
それくらいのことがないと、僕は麻布十番祭りというものを知らないまま、死ぬ。
コロッケの劇場を確認した後、昼食。
4年前に訪れた久留米ラーメンの店を再訪。
きくらげが入っていない、という以外は極めて普通の久留米ラーメンであるが、東京で普通の久留米ラーメンを食べるのも困難であるのが、実態である。
壁には、有名人のサインが並べて貼られている。
サインを探すけれど、見つからない。
フミヤはいいんだよ、探しているのは田中麗奈のサインである。
きっと来ているけれど、食事中にサインを求めるなど、下劣な店員がここにはいないのだろう。
また、高低差である。
断崖に備え付けられた階段を上り進むと、オーストラリア大使館。
少し歩いたところにある建物が何なのかわからなかったが、地図によると「旧社会保険庁」とあり、また闇を感じる。
イタリア大使館をねたむように見て、坂を下り、慶応大学のオフィシャルショップを冷やかす。
名刺入れを買い換えたいと思っていて、ちょうど印伝の名刺入れが売っていたが、慶応のマークが散りばめられている名刺入れを持つのも、気が引ける。
キャンパス内の「福沢諭吉旧居跡」を見てみたかったが、中津の旧居跡に行ったことがあるし、まあいいか。