曇天の続き

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2012-08-19 Sun.

菲薄

2012-08-19

昔、僕には映画を見るという習慣が全くなかった。

まず、映画館に足を運ぶということがなかった。
中学を卒業するまでに映画館に行ったのは、「大長編ドラえもん」を見に行ったのと(後藤寺バスターミナルの上にあるターミナル会館)、中学校の行事だけである(「おろしや国酔夢譚」と「息子」と「ホームアローン2」)。

当時、映画産業は斜陽を迎えていた。
今みたいにシネマコンプレックスもなく、映画館というのは暗く汚い場所というイメージがあった。
ましてや、僕の地元は小倉である。
今と違って、繁華街に足を運ぶのも、いろいろと制限があった。

一方で、自宅で映画を見ることもほとんどなかった。

ビデオデッキが一般家庭に普及したのは、せいぜい中学生の頃だったと思う。
子供のころは、近所にレンタルビデオ店はなかった。
僕の実家にVHSデッキが設置されたのは、一般よりもさらに遅く、確か1995年である。

映画を見ると言えば、せいぜいTVで放送されるのを時々見るくらいだった。
放送はだいたい午後9時以降なので、小学生の頃は寝てしまっていた。
中学生の頃にも、他の番組を優先していたので、進んで映画番組を見ようとすることがなかった。

TVで時々見たり、学校の体育館で見たりした経験から、映画を見ることが好きであることは何となく気づいていた。
しかし、僕には、映画を自由に見る手段がなかった。
だから、他の世代によくある、「あの懐かしい映画が好きだ」という感覚が欠落している。

映画が娯楽の中心であった時代。
そして、映画を自宅で自由に見られる時代。
僕は、その間の時代に育った、「映画を見ることが不自由だった世代」に属している。

そうは言っても、何とか「ミニシアターブーム」の中にいた世代である。
あるいは、「J MOVIE WARS」にギリギリ間に合った世代である。
つまり、忘れ去られる世代である。

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