密林
2012-07-07
中年男性は脚を見せるな。
自宅の近所にショッピングモールがある。
自分の家にもかかわらず居場所がないので、時々そこに行って、コーヒーショップでコーヒーを飲むようにしている。
コーヒーは、年中ホットで飲む。
実は、アイスコーヒーが苦手だからである。
よほどおいしいものでない限り飲みたくないので、滅多なことでは注文しないようにしている。
近頃、暑くなった。
電力不足が言われているので、ショッピングモールといえども、空調の設定温度はぬるめである。
また、軽装の客も多く目につく。
隣のテーブルの席に、中年男性が座る。
Tシャツに半ズボン、サンダルにキャップ、という格好である。
彼は我が家にいるつもりでこんな格好をしているのかも知れないが、まあそれくらいは容認できる。
きっと、どこにも居場所がないのだろう。
やがて、彼はサンダルを脱ぐ。
そして足を組み、こちらに足の裏を見せてくる。
運動のつもりなのか、足の指をうねうねとうごめかせている。
おじさんのすね毛や足の裏が視界に入る中で飲むコーヒーをおいしく感じる、という嗜好が僕には全くない。
いくら暑いからと言って、素足や濃いすね毛を見せつけて街を歩くのは、相手に不快な印象を与える可能性がある。
だから、僕は半ズボンで外を歩くのは、近所のコンビニまでにしよう、と改めて決意した。
僕の腕毛はそれほど濃くはないのだが、仮に腕毛ふさふさだったら、半袖を着て外に出るのも憚られることだったろう。
中年男性には、清潔感しか求められていないのだ。