森笑
昔、カセットテープにダビングした音楽のリスト、というものを手書きで作成していた。
テープ自体は実家に置いてきたが、リストは今もまだ手元に持っている。
置いてきたテープの消息は知れない。
時々、リストを見返してみる。
忘れていた名作を思い出せるのではないか、と期待して。
しかし、再び聴いてみたい、と思うような音楽を発見することは、ほとんどない。
人生のいい時期を無駄遣いしていた、と痛感できる。
1996年頃、Microsoft WorksというOfficeの廉価版のようなソフトウェアを購入した。
それを期に、カセットテープにダビングした音楽のリストをWorksのデータベースで管理するようにした。
Worksで作成したファイルを今も持っているが、中身はテキストではなくバイナリだ。
読み込むためのソフトウェアが手元にないので、内容を復元することは困難だ。
ただ、テキストエディタでエンコードをShift_JISに指定して開けば、内容をある程度把握することができる。
こちらの方は、見返すと多少の収穫がある。
例えば、Jungle Smile。
名前を見ても、音楽は一片たりとも何も思い出せない。
録音したほどのものなのだから、もしかしたら好きだったのかも知れない、と期待が高まる。
試しに、レンタルショップで探してみると、Jungle SmileのCDが1つあった。
とりあえず、「林檎のためいき」を借り、聴いてみることにする。
絶望的なほどに、詞が重い。
だいたい、タイトルの並びからして、息が詰まりそうになる。
僕は昔から本当に、歌詞というものに全く無頓着であったな、と気づかされる。
またしても、僕の過去は、自分を苦しめるのであった。
ただ、メロディが心地よかった。
メロディが気に入っていたから、聴いていたのかも知れない。
調べてみると、作曲者の吉田ゐさおはJungle Smileのメンバーで、今も現役のミュージシャンである。
手嶌葵の歌で、NHKで4月に放送していた「フローズンプラネット」の主題歌「氷の大地」の作詞、作曲を手がけていた。
僕はこの歌が好きで、つい最近もこの歌を歌う手嶌葵のモノマネをするのを楽しんでいた。
もちろん、Jungle Smileのことは知らずに。
お気に入りは、過去の自分に聞け。