支援
僕は元来真面目な人間である。
今回も、選挙に行く前に、「選挙」に行ってきた。
新聞に、「選挙」という映画の記事が掲載されていて、その映画を選挙前に見てきたのだ。
実に素直で、真面目だ。
新聞の記事を見て映画を見に行く、という行動は13年前にも実行した。
その映画とは、矢口史靖監督の「ひみつの花園」。
小倉で新聞記事を見て、大学受験がてら、新宿の武蔵野館で見た。
1997年2月27日のことだから、もうずいぶんと昔だ。
さて、「選挙」の上映は午前10時開始のモーニングショー。
場所は、新宿。
9時30分には新宿駅に到着し、駅周辺をしばらく散策する。
実は、今年初めての新宿。
街はどれくらい変化しているのだろう、と思ったが、さほど変化は感じなかった。
13年前と大きく変わっているところもあるが、細かいところがそんなに変わっていない、という印象を持った。
映画館の前に選挙ポスターの掲示板があったので、暇つぶしに又吉イエス氏の訴えを熟読する。
新宿ケイズシネマ、開場。
前にここに来たのは、1998年10月7日。
その時はまだ「昭和館」と名乗っており、ここで「弾丸ランナー」と「ポストマン・ブルース」を2本立てで見た。
場内の空気がよどんでいて、上映中に携帯電話が鳴り、中年男性が電話の相手と不穏な会話をしていた(場所柄、お察し下さい)。
12年来ないうちに、改装されてきれいでおしゃれになっていた。
本編。
海外では観客が大爆笑していたらしいが、さすがに自国のことだとほとんど笑えない。
典型的なドブ板選挙の様子に、ずっとため息をついていた。
唯一笑ったのは、選挙活動第1日目の街頭演説で、応援演説に来ていた国会議員が後ろで「しがらみなんかないぞ」と候補者につぶやき、候補者がそのまま「しがらみは一切ありません」と言っているシーン。
決定的な自己矛盾に、僕は思わず「しがらみしかないじゃん」と声に出して言ってしまう。
僕だって、幼稚園の運動会で議員が園児の前で挨拶しているシーンで大笑いしたかった。
支援者の、「だから、造反なんてとんでもないことなんだよね」というすごみをきかした発言と鋭い目つきは、実に重かった。
ある人達にとって、選挙とは民主主義とはかけ離れたお祭りである。
同じ意見であることを確かめ合い、仲間の顔を把握するための祭りだ。
そう考えると、僕が選挙にあまり関心を持てないのがわかる。
それでも、どんなに嫌気がさそうが、僕は投票することを放棄してはならないのだろう。
そんなことをしても、誰かが喜ぶだけだから。
「観察映画」という、ナレーションはおろか、テロップすら出ない映像で成立しているのには、実に驚いた。
監督の今後の作品も見ていきたい。
次の題材は、名門高校野球部がいいな。