実利
2009-08-11
僕は、非喫煙者である。
僕が子供の頃は、「成人男性は煙草を吸うもの」という風潮だったし、周囲の大人も男性ならほぼみんな煙草を吸っていた。
学校の職員室も禁煙ではなかった。
父親も喫煙者で、父親の命で近所のコンビニに何度も煙草を買いに行かされた。
なので、自分も、大人になれば吸うものだと思っていた。
僕が煙草を吸わないでおこうと決心したのは、中学での保健の授業の時である。
ニコチン溶液に入れられたミミズが縮んで死んでいる写真を教科書で見たのも1つの理由だが、決定的な理由は他にある。
保健の教師が煙草の悪害について、次のように教えてくれた。
「生涯に吸う煙草の総金額を計算したところ、1日1箱しか吸わないにしろ、高級車が1台買えるくらいになる。とてもばかばかしいことだが、今となってはもう煙草を辞められない。最初から吸わなければよかった。なので、お前らは決して吸うな」
吝嗇な僕は、この話を聴いて以来、煙草に手を出そうとは全く思えなくなった。
生まれて初めて吸う煙草は間違いなくうまくない。
それをわざわざ克服してまで、浪費に走る必要はない。
にしても、誰か酒についても同じようなことを教えてくれればよかったのに、と思う。
これまでの酒代を合計すれば、ヴィッツくらい買えたんじゃないか。
あるいは、トヨタのノアでも買って、CMタレントの嗜好品購入に貢献できたかもしれない。
何はともあれ、長年連れ添った嗜好品を断つのは難しい。
一方で、数学の教師は、宝くじを買うことが実にくだらないかを確率論とともに教えてくれた。
だから、忌野清志郎の歌を聴くまでもなく、僕は宝くじを買わない。