片隅
2009-06-09
「角打ち」とは、酒屋で買った酒をその店の一角に設けられたスペースで飲む、という北九州特有のスタイルのことを言う。
詳しくは、北九州角打ち文化研究会で。
僕の父親は、会社帰りによく角打ちに寄っていた。
成人男性たる者、会社帰りはまっすぐ家に帰らず、角打ちをやるもの。
僕もいずれ、そんな大人になるのだろう。
そう思って成長してきた。
大人になり、地元を離れてしまった。
未だ、角打ちに行ったことはない。
周りに角打ちをやっている大人なんて、1人もいない。
それどころか、地元以外で「角打ち」という言葉すら聞いたことがない。
「角打ち」という概念があるかどうかも、実にあやしい。
2009年5月28日の深夜に、ある番組が再放送という形で全国放送された。
NHK福岡放送局制作の「福岡にんげん交差点」である。
番組のタイトルは、「きょうも角打ちであいましょう」。
折尾駅にほど近い角打ちスポットと、そこに集まる人々を描いた番組だった。
ナレーションもない、素朴な番組である。
その番組に出てくる角打ちには高齢者の客が多く集まっていた。
そして、角打ちが高齢者の安否を確認する場所になっていた。
実際に、ある日ぱったり顔を見せなくなったきり、今生の別れとなる例もあったそうだ。
子どもの頃に抱いていたイメージと、現代の様相がひどく違う。
北九州市は、角打ちをキーステーションとする高齢者ケアネットワークを確立した方がいいんじゃないか、と本気で思った。