粒揃
先日、TVで「男はつらいよ 幸せの青い鳥」をやっていた。
寅さんの中でも、この映画は見ている回数が多い。
理由はいくつかあって、まず出川さんが出てくるからである。
今回の放送日は、BSで「寅さん」、地上波で「充電旅」をやっていて、結局どっちのチャネルにも出ている出川哲朗の到達点に驚く。
映画の最後には、有森也実とエド・はるみが出てくる。
次に、舞台が筑豊であるからである。
最初に萩が出てきて、次に赤間神宮、関門航路の乗り場で不破万作さんが出てきて、飯塚の嘉穂劇場、炭坑住宅、そして田川伊田駅。
懐かしく思う。
また、画家を目指す男と婚約するものの、結婚することで生活のために画家の夢をあきらめるのではないかと悩む姿も、まあ山田洋次らしいが、共感を覚える。
幸せの在り方について、考える。
ところで、田川伊田駅の駅前の風景は、子供のころに確かに見ていたもので、本当に懐かしい。
昨年田川伊田駅に行ったが、この映画に出ている風景はもう何1つ残っていないように思えた。
ただただ、往時をしのぶことができる広大な駅構内だけが、変わらない。
駅前に甘栗屋があった。
「確かに田川伊田駅の駅前で、甘栗を買ってもらったはずなのにな」という記憶に自信がなくなっても、この映画を見返せば安心することができる。
僕が子供のころにはたくさんあった甘栗屋。
今はほとんどなくなってしまった。
そして、恐れていたことが現実になる。
ついに東京にある甘栗屋も閉業してしまった。
前回の訪問から時間が空いてしまい、久しぶりに店先を通ったら、すでにシャッターが閉まっていた。
この店舗だけでなく、会社自体が閉業するようである。
事前に閉業を予告していたようだが、全く知らなかったので、再訪することもかなわなかった。
知っていたら、ぜひともこれまでの感謝を伝えたかった。
甘栗がこんなにも入手しづらいものになってしまうとは。
何が悪いのか、まったくわからない。
スーパーで売っている、すでに殻が剥いてある甘栗のパックは、およそ甘栗とは言えない。
甘栗のない人生など、何の楽しみもない、これは決して大げさな表現ではない。