代所
行政書士試験を受けてきた。
記録をたどれば、2020年11月8日以来2回目。
前回は、昼にタイ料理店でグリーンカレーを食べた後、大会場で受験した。
試験途中でおなかの調子が悪くなり、何と戦っているのかよくわからない状況になった。
結果は散々なもので、一般常識があることだけが証明された。
1年前に再受験を発起した。
きっかけは、総合旅行取扱管理者試験を受験したときに、自分が法律関係のリテラシーが低いことを実感したことだ。
良識ある市民として法律の勉強くらい必要かと思い、ちょうどよさそうな資格試験を探し、行政書士なら何とか独学でも行けそうかと見込みを立てた。
まずは、「バラエティー生活笑百科」を視聴…、しようと思ったら、番組が終わっていた。
僕は、いとしこいしや横山ホットブラザーズから法律のイロハを学び、もめ事をまーるく収めてきたのだ。
行列に並んでも今回は効果が見込めないので、親指を立てて「グッジョブ!」。
週に1、2度、30分程度テキストを開き勉強をしてきた。
しかし、覚えることが多すぎて、途中でいやになった。
公務員になってしまえば、何をやるにしても、法律やルールに抵触していないかを考えないといけないのだろう。
「僕のような面倒がりの人間が公務員にならなくて、本当によかった」とつくづく思った。
記憶は、結果的には人より得意とするところだと言えよう。
しかしながら、「記憶しよう」とすることは、苦手というか、いやである。
僕が記憶に頼ることは少なく、実際は、理屈の演繹、物事のはまり具合で切り抜けていることが多い。
何か理屈をもらって、その理屈を理解すれば、詳細を導き出せる、というのが、今までの種々の試験で実施できてきたことだ。
初めての分野については、専門家の意見を素直に聞けないので、人より修得に時間がかかる。
できれば誰かに理屈を教えてほしいのだが、知り合いの少ない僕には先生になってくれる人がいない。
そもそも、「なぜそうなるのか」を説明できる先生は、世の中にはほとんどいない。
組織に寄りかかり、ルールを守ることだけで身を温めている人間が多いのだ。
それを否定するつもりはなく、僕ができないだけにすぎない。
そんな僕にも、今回は唯一の味方がいた。
その人は、法学部出身のITエンジニアである。
行政書士試験を受けることを打ち明け、「法律の運用とITエンジニアリングは似ている」とという自分の考えを聞いてもらった。
すると、その人は僕に話を合わせてくれて、文献の紹介をし、法学の話を聞かせてくれた。
それがまさに、自分が興味があることだったのだ。
「規約に思いを込め、規約から思いを知る」という異次元な話に同調してもらい、ずいぶんと心強い思いがした。
試験対策として行政法を中心に勉強しなければならないのだが、内容が全然入ってこない。
民法、会社法、個人情報保護法なども試験範囲だが、こちらもなじめず、おろそかになってしまった。
憲法だけがまあ親しみが持てて、Kindleで日本国憲法を毎日読み、過去問に取り組んだ。
傍から見れば、すっかり護憲派である。
試験当日。
前回の反省もあり、昼食はラーメン、水分も控えめにした。
試験会場は、東長野大学 おばけ煙突キャンパス。
駅から徒歩20分、というのに驚かされたのだが、歩いてみれば意外といける。
僕が学生だったら、文句ばかり言ってキャンパスから足が遠ざかり、愚かな僕は自分から未来を閉ざしていただろう。
学生の頃に歩くことの重要性に気付いていれば、もう少しまともな人間になれていて、人に迷惑をかけることも少なかっただろうに、とよく思う。
試験会場の教室の出席率は約70%。
若い人が多く、なかにぽつぽつと白髪がいる。
解答用紙に生年月日を書き、「昭和」という文字を手書きで久しぶりに書いた。
試験時間は、3時間。
今回は試験問題の意味が分からないということも少なく、結構できたのではないか、という実感を得た。
試験を終え、右手中指の爪の付け根が痛かった。
子どものころからのペンの持ち方の癖で、以前はこの個所が固くなっていたのだが、それがゆるんでしまったようで、久しぶりにペンを持って痛くなったらしい。
情けない話だ。
後日、自己採点。
一般常識は2問間違いで、前回と同じ。
ラオスの政体に自信が持てず、「これはカンボジアのことじゃないかな」という直感はやはり当たっていた。
個人情報保護法の問題を外したのは、情けない。
一方、法律問題の択一式は、3割程度の正答率。
前回よりは点数が高いが、これでは、記述式の採点はされないだろう。
何が「結構できた」だ、と思われるかもしれない。
ただ、前回は「答えを見ても、全然わからない」という状態だったが、今回は、問題を見直した際「ここが違っていたか」ぐらいは思えるようになった。
「資格試験の本番は、壮大な模擬試験」というのが、自分の受験モットーである。
勘違いかもしれないが、今回は結構な手ごたえを得たつもりで、次はいいところまで行けるのではないかと思う。
本来の目的の第一段階に到達し、次は記憶を頑張る段階だ、と言えよう。