曇天の続き

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2022-03-05 Sat.

乗々

2022-03-05

ある土曜の早朝。
「のどがついに張り付いたか」と感じさせるほどの、のどの渇き。
金曜の夜から飲みすぎているようでは、先が思いやられる。
冷蔵庫から麦茶を取り出し、グラスに注ぎ、飲む。
近頃、冷たいたものがのどをすんなりと通らなくなった。
何をやったとしても、この体には負担なのだろう。

リビングのビデオレコーダーが稼働していて、何かの番組を録画している。
何を録画予約したのだろう、「テレビ寺子屋」か、と一瞬見当がつかなくて、自分で録画予約したことを思い出す。

ああ、「あさモヤ」か。

いつも日曜の夜に録画したものを見ていたので、これほど早い時間に放送されている感覚がなかったのだ。
放送とリアルタイムで感じることで初めて思い知るのだが、こんな異質なことをしているのか。
これではついつい見てしまう番組、林家まる子出演の「おはよう茨城」と同じだ。

ただ、今日は「あさモヤ」が始まる前の時刻にセットされたアラームで起床しなければならなかった。

今日の「あさモヤ」には狩野アナが出演している。
一切年を取らない人もいるものだなと感心し、番組視聴の途中で自宅を出る。

移動の列車の中では、Paris matchの「to the nines」を聞く。
彼女は「17」歳である。

radikoをKBCに合わせる。
7時から放送が始まるはずなのに、無音である。
しばらくして「放送が止まっている」というアナウンスが入り、1分ほどして番組が始まる。
「めぐみのラジオ」のいわぶ見梨によると、スタジオを間違えていたそうである。
恐ろしいのは、これほどの大「放送事故」にもかかわらず、あとで特に騒ぎになっていないことだ。

新宿駅に到着。
なぜまず新宿駅に行くことなったのか、この文章に後から出てくる目的地を考えると説明に苦慮するし、理解もされないだろう。

ここは自重して、水と500ml缶を購入する。
ラジオからは、確定申告を済ませたことがパーソナリティから報告され、今日は黄砂が舞うので洗濯物を干すのは気を付けてと注意喚起され、もうすぐ春ということで、Hysteric Blueの「春~spring~」がかかる。
最初から2人だったら、どんなに良かっただろう。

中央線特急に乗るのは、8年ぶりである。
E353系は初めて。
多摩川を超えて我慢を解き放ち、缶を開放する。
事前に「日本百貨店しょくひんかん」でつまみを購入しておいた。
まずは、オキハムのガッツくん。
それほど口に合わない。

すぐ斜め後ろには背広の不動産営業の男(イメージ)が、書類を広げている。
その少し後ろには、途中駅で乗り込んできた外国人を含む若い4人組。
まだまだ日常は戻ってきていない。

美しく伸びる圏央道の橋梁、中央本線とともに上るバス路線の細道と南浅川の流れ。
大月は遠く、甲府はさらに遠い。
ホヤの干物を食べながら「あこがれの職業は」というラジオのテーマに沈思黙考し、「ダンサー」という答えを出す。
芋洗坂係長、郷土の先輩である小浦さんがあこがれである。
「プロ野球選手になりたかったんです」と言ったある芸人に「だったら、なればよかったじゃないですか」と言ったナイツ塙の返しが、最近は気に入っている。
村下孝蔵の「踊り子」に、やや気分が上がる。

大月を過ぎ、残雪の車窓を眺める。
KBCシネマでは「メモリア」という映画がかかっているらしく、どうも好きそうな映画である。
自分の好きな映画の種類は「どうやって撮られたんだろう」「撮るのにどれだけ大変だったのだろう」と思ってしまう映画である、と思い至った。
たとえば「ひみつの花園」の「特撮」が好きだし、ご存じの通り「八甲田山」の雪崩のシーンで大笑いした過去もある。
ローカル線にロングシートがはびこるようになってからは、いい座面に座ってローカル線に乗る、というのが贅沢だと悟った。

河口湖駅に到着。
駅訪問は17年ぶりで、前回は高速バスで来て、目的はまさかの「労働組合の新入社員合宿」だった。

景色を視界にとらえ、視力が上がったような気がする。
富士山のほうを目指してしばらく歩き、湖の方向とは反対に歩いていることに気付き、駅に戻る。
手には早くも、大量の土産の袋。

河口湖駅前から乗車した路線バスは湖畔を通る。
これだったら、時間調整を兼ねて歩いて来ればよかったなと思いつく。
実はこの技は「路線バス乗り継ぎ旅」で実践されており、それを自分のアイデアのように思いついた自分を恥じる。

新御坂トンネルに入る。
御坂隧道だけがあった往時を地図から思うと、技術の進歩である。
これにも飽き足らず新たなトンネルを計画しているとは、本当に需要があるのだろうか、あるのだろう。
トンネルを出た下り坂をバスは快走し、僕はスピードが怖くて仕方ない。
突如現れた山梨県立博物館、石和温泉駅を過ぎてからのカクカク道を通過する。

甲府駅南口に到着。
甲府の地を訪れたのは、ほぼ初めてである。
駅前に城址があり、店舗の通りなども整備されている。
改札で華麗にオートチャージして、駅弁「元気甲斐」と350ml缶とぶどうからできた飲料缶を購入。

ワイドビューふじかわに乗る。
JR東海の在来線特急に乗るのは、高校の修学旅行での「しなの」以来、28年ぶりではないだろうか。
ひなびた車窓を尻目に、元気甲斐を食べる。
駅弁は、列車に乗って食べるから、おいしい。
前日にえきねっとで指定席を予約しておいたが、やはりその必要はなかったようだ。

甲斐岩間駅手前で、中部横断道の橋梁が見える。
スマートではあるが、仰々しい。
右後部には中年女性2人連れが席を並べているが、しゃべるのをやめて眠っている。
黙るパターンもあるのだと、感心。

渓谷を下っているはずだが、迫っているようにも感じる。
どこにでも団地はあるものだ、と沿線風景を楽しむ。
貝柱の干物をかじりつつ、飲料をたしなむ。
「スーパードライの味が変わった」と缶に書いてあって、味の違いはかろうじて分かるが、前と比べてどちらがいいかは判然としない。
とにかく、楽しむを失わずには済んだようだ。

身延線のダイヤグラムはいかにもすれ違いを中心にしたもので、列車はゆっくりと進む。
再び中部横断道の高架やインターチェンジを見て、まるで「陸蒸気」をにらみつける「ひらた船」の水夫のような、山本作兵衛翁の描いた絵にいる人物のような気持ちになる。
何といっても僕は、国鉄民営化の激変とあまたの廃線を経験した「北九州の子」である。
登山鉄道は別として、アトラクションとしての鉄道にさほど思い入れはない。

酒と弁当は進み、はんこの町六郷を後にし、狭い土地に作られた茶畑が現れる。
14時を過ぎたころ、高齢者がゲートボールを楽しむ様子を車窓から見かける。
やがて富士川を離れ、視界は開け、富士宮の街を抱える富士山が前方に現れる。

富士宮駅に到着。
想像していたよりも、はるかに駅が軽い。
歩道橋があって、バス乗り場があったりするけれど、とても観光地を従えている様子は感じられない。
徒歩コースに商店街を1つ選び、散策する。
門前町の趣は感じられない。

富士宮本宮浅間大社を訪れる。
僕は宗教上の理由から未来永劫一切のさい銭をやめたので、拝礼にとどめる。
湧玉池のほとりに座る。
街中は特に焼きそばのにおいが立ち込めているわけではなく、穏やかな雰囲気が漂っている。

おそらくこれで十分なのだ。
美しい富士の嶺を授かり、この街はこれ以上に何を求めるだろう。
静岡県富士山世界遺産センターの脇を抜け、ベニー紡績踏切を見て、高架橋を観察し、駅に戻る。

身延線普通列車で複線を進む。
車内広告ゼロに震撼し、我が物顔過ぎる新東名をくぐり、富士駅の広い構内を乗り換え、東海道本線上り。
吉原駅で降り、岳南電車乗り換え用の高架橋を渡る。
IC改札を出ると、駅員に声をかけられる。
フリー乗車券を駅員に求め、「2日間有効」というオーバースペックなフリー乗車券を硬券で支給される。
連絡が良くて出発まで時間がなく、旧井の頭線のような列車に乗り込む。
車内では、フリーwifiが使えるようで、そこはすごく感心した。
電鈴式遮断機に耳を奪われる。

岳南江尾駅に到着。
ここに、岳南電車終わる。
駅舎を出入りしていると、すぐに上りの出発時刻になる。
危うく乗り遅れるところだった、ここで取り残されるのはつらい。

再び吉原駅に到着。
駅舎を出て、行政レベルで夜間婦女子の1人歩きを勧めない線路下の細い地下道を走り抜ける。
南口側も特に何もない。
「住宅しかない住宅街」とは何なのだろうか。
改札を抜け、東海道本線下り列車に乗る。
貨物列車の往来が目立つ。

ようやく富士川を超える。
由比の海岸は高架で占められている。
バス旅なのに、しかも夜なのに、薩埵峠を歩いて超え、しかも映像は使われないなんて、狂気の判断である、そりゃ戦争にも負ける。

清水駅に到着。
駅舎はほどほどに大きいが、簡素だし、さみしい。
駅前の商店街もやや寂しい。
大きな都市と想像していたが、もしここが地元だとして、地元に帰ってきてこの様子だったら、少しショックである。
黒崎は今、こんな感じだったりしないだろうか。

10分ほど歩き、新清水駅に到着。
迷わず静岡鉄道静岡清水線の列車に乗る。
古い車両だったのが、少し残念。
短い距離に駅が設置されており、実に好感が持てる。

実は今回の目的地、静岡に来たのは、将来静岡への移住を考え始めたからである。

東京はとにかく住居費が高い。
そして寒くて、海がなく、魚が手に入らず、山がなく、落ち着かない。
東京を離れるにしても、北関東にも、南房総にも、甲斐路にも住みたくない。
僕は都会に住み、ラーメン店を訪れたいのだ。
東京に距離が近い都市で、山があって、魚があって、茶があって、みかんがあって、温暖で…、となると、静岡が候補に挙がってきた。
これで、地震と富士山噴火さえなければいいのだが、よく考えると東京も同条件である。

東海道本線と東海道新幹線の線路を超え、MARK ISの脇を抜け、新静岡駅に到着。
これで今回の未乗区間訪問、富士急行線、身延線、岳南電車、静岡鉄道はクリアとなる。
LuLuCaポイントを何に使うのかと不思議だったが、ここ新静岡セノバで使えばよいようだ。
18時を過ぎ、昨今の事情によりあたりは暗くて、街の様子をとらえられないが、店は多く、人の往来もある。
早く、JR駅南口のホテルに行かなければ、間に合わない。

ホテルに全自動チェックイン。
スマートTVが備え付けられており、チャンネルをテレビ静岡に合わせる。
「くさデカ」の放送に間に合った、ようやく平畠さんを見ることができる…。
今週の「くさデカ」は、浅尾美和とアナウンサーが出演していた。
番組を見て、「こんなにも情報番組なのか」とあっけにとられる。
とにかくウェブサイトのお店検索が充実しているものの、更新が追い付いていないようだ。
平畠啓史を見るには適さないが、浅尾美和の仕事ぶりを見るにはうってつけである、考えさせられるものがある。

19時を回り、食事とする。
駅の北側に回り、新静岡駅に戻り、セノバを物色する。
店は開いてはいるものの、どこも「おじゃマンボウ」のあおりを受けているようで、受付を済ませた客まででもう新規客を受け入れないと言われる。
セノバ近くのラーメン屋でもいいのだが、昨日の昼にラーメンを食べたばかりだったので、気が進まない。
駅まで戻り、パルシェやアスティを彷徨するも、どの店も閉まりかけている。
そこで、気乗りしなかったが、海鮮居酒屋に入る。
案の定単独客に適切な献立はなく、さしあたりジョッキとおすすめのボタンエビの刺身を注文。
それからずいぶんとメニューを見たが、やはり気乗りせず、焼きガキを注文。
追加の飲み物はやめようと思ったが、焼きガキを前にして、店員にも「20時まであと1分あります」と教唆さ、アドバイスを受け、浦霞90mlを唱える。
驚くべきというか、当たり前というか、ボタンエビもカキもおいしい。

駅ビルでプリンと飲料を購入し、ローソンで高級おにぎりを購入。
ふらふらと夜道を散策するも、店は酒も出していないし、当然人通りも少ないし、暗い。

ホテルに戻り、スマートTVで、ダウンタウンやウッチャンナンチャンの番組を視聴。
どういうことだか仕組みはよくわからないが、「気分は上々」の最終回が流れてくる。
花王のCMでは、ガーデンズではなくdeepsの歌詞で「バイバイブルー」と聞こえてくる。
deepsこそ、時代のあだ花というか犠牲者代表というか。
中山忍が歯を磨き、辻香緒里が洗顔し、タケカワユキヒデがCMソングを歌い、本上まなみが「私も髪伸ばそうかな」とのたまう。
このCMは当時から無理のある「へもい」CMだった、と本当に無駄なことを思い出す。

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