滑石

わけあって、公共施設でカーリング中継を見ることとなった。

生涯学習センター、という役割の建物は、3階までの広い吹き抜けでも暖房によって快適な室温が保たれている。
施設の一角には情報収集コーナーがあり、全国のあまたある自治体が作るチラシが集められて、訪問者を待っている。
数台の情報端末は画面にスクリーンセーバーを映しつつ、利用者を訪問を待っている。
ここに来さえすれば、どんな情報でも手に入りそうなものだが、なぜ利用者を見かけないのだろう。
自宅に閉じこもっていて、何がわかる。

その暖かい吹き抜けの片隅に40インチほどのTVが設置されていて、NHK総合が無音で流れている。
前にはベテラン男性2名が陣取っており、画面を見つめている。
彼らの背後にある長椅子に座り、画面をのぞき込む。
無音のカーリング中継はほどほどに面白いものの、説明を避けたくなる物足りなさを感じる。

勝負が決したようだ、と思ったところに時間が来て、試合途中で施設を後にする。
自動販売機の前の狭い休憩スペースでは、行政職研修を受けているベテラン10名程度が、弁当のにおいを充満させながらくっちゃべっている。
もう旅立つ覚悟を決めているのかもしれないが、迷惑だけはかけないでもらいたい。