甦生
近所のカレー店に、週に1度程度通っていた。
しかし、ある時、「カツカレー専門店」に業態変更し、それ以来行くのをやめた。
先日、その「カツカレー専門店」に初めて行った。
カツカレーのことが、実はよくわからない。
とんかつは好きだし、カレーも好きだ。
それにもかかわらず、それらを一緒にすることの良さがわからない。
豚の一枚肉と、カレーライスを同時に食べたいというニーズにこたえているのだろうか。
とにかく、僕にはそれが何の魅力にも思えず、それゆえ「カツカレー値引きキャンペーン」などやられていても、普通のカレーを頼む。
「なぜ、普段より安いのにカツカレーにしないのですか」と聞かれるのが嫌で、人との会食も避けるようになる。
ちなみに、唐揚カレーやイカリングフライカレーは、比較的「好物」の部類に入る食べ物である。
そんな経緯で、カツカレー専門店には足を運ばなかったのだが、ここ最近の「米を食べなければ」という強迫観念に駆られ、食欲もないので近所のカツカレー専門店に赴いた。
チキンカツカレーのほうがよかったが、予算の都合上、安価のロースカツカレーを注文する。
運ばれてきたロースカツカレーの、やや少なめのライスの量に落胆する。
後で、コンビニエンスストアでおにぎりを買うことになるだろう。
ロースカツにソースをかけ、ライスとカレールーの境界上に福神漬けを配し、できるだけカレールーにつけないようにロースカツを持ち上げ、食す。
おいしい。
次に、ライスとルーの境目にスプーンを突っ込み、混ざっていないままのカレーライスをすくい上げる。
もちろん、福神漬けを2切ほど載せることもおろそかにしない。
そして、食べる、当然、おいしい。
それでも、カツにカレーをまぶすことに抵抗を覚える。
「カツとカレーは相性がいい」とは、どうしても思えない。
衣をつけて揚げたカレーパンは好きだから、ほんの少しのはずみでカツカレーも好きになりそうなものだが。
店内のBGMに、聞き覚え。
ああこれは、ICEの「C'est la vie」にサンプリングされたフレーズだ。
疑問が生じればすぐに調べることができる文明に感謝し、それがSpandau Balletの「True」であることを知る。
サンプリングされた部分しか知らず、原曲を意識的に聞くのは初めてだが、頭の中ではすばらしい「C'est la vie」が流れていて、BGMを打ち消してしまう。
なぜ、この曲を使ったのだろう。
一日の終わりに、「C'est la vie」についての宮内和之の発言を収録した記事を再掲したブログを読み、すっきりした気分になる。
潜り抜けてきた時代を受け入れ、その時の気持ちを昇華させ、作品を世に披露する。
人生なんて、きっとそういうことだ。
なお、上記のブログに登場する清水あゆみのアルバム「4:30 am」は、現在amazon musicで入手できる。
素晴らしい時代だ。