赤糸
「返却するのが面倒だ」
そういう理由で、レンタルショップに行くのをやめ、見たい映画を借りなかった、という発言を聴いた。
確かに、レンタルショップに行くのは面倒である。
僕の生活動線には、レンタルビデオショップがない。
返却は郵便で済むとは言え、店に行くには、途中の駅で降りる必要がある。
さらに言うと、僕が見たいと思うビデオなどが、その店にあるとは思えない。
実際、事前にウェブサイトで調べて、在庫がないことによる落胆を何度も味わった。
それでは、ウェブサービスでビデオを見ればいい、となる。
そもそも前述の発言も、見たい映画がネットで配信されていないことを確認した上でのものだった。
しかしながら、僕が見たいと思うビデオなどが、ウェブサービスで提供されているとも思えない。
実際、オンデマンドサービスにアクセスし、提供リストに上がっていないことによる絶望を何度も味わった。
むしろ、自分の興味をサービスにオンデマンドしなければならないのだ。
それでもまだ、救いがある。
ウェブサイトで注文すれば、ディスクが郵送されるレンタルサービスがある。
そんな経緯で、およそ2年ぶりに映像ディスクを借りた。
そのタイトルは、「千津子とその妹の物語-「ふたり」メイキング-」である。
見終わってみると、好きな映画第1位は「ふたり」に決めてしまっていいのではないか、とすら思う。
過去を振り返れば、映画ランキング第1位は「ふたり」である、という1996年6月7日時点のメモもあったし。
もちろん、現実に引き戻されると、対外的な意見を述べなければならない世の中からのプレッシャーを覚える。
印象に残ったのは、
- 雨ばかり降っていた印象があったが、(水を撒いていたのではなく)実際の雨が降った中での撮影が多くあったこと。
- 中嶋朋子の最後の撮影は、千津子が亡くなるシーンであったこと。
- 石田ひかりが撮影を終えて、寝台特急「富士」で帰京したこと。
- 岸部一徳はさすがに若く、赤川次郎が羽田圭介のように見えたこと。
である。
特に、岸部一徳のインタビューでの話は印象に残り、子供のころに持っていた気持ちをいつまでも持つことで、大林作品に参加している、みたいなコメントがあった。
それにしても、少なくとも20年前に最初に見て、計3回くらい見ただけの映画なのに、内容やシーンを、ところどころではあるがよく覚えているものだ。
1997年の尾道旅行でロケ地巡りをしたことを差し引いても、だ。
今後、自分の記憶に新たな「いいもの」が焼き付けられることがあるのだろうか。
思い返しても、ここ10年でいいことを1個だけしか認定できない、この頭で。