離界
「東京上空いらしゃいませ」を見る。
NHK BSプレミアムで2016年6月27日に放送されたものを録画した。
1996年8月20日以来3回目の視聴、と記録ではなっている。
僕はきっと、牧瀬里穂への評価が厳しいのだろう。
その自覚はあるし、森口博子が執拗に物まねしていたことにも一定の共感をしている。
クラシック・バレエ仕込みのターンにすら顔をしかめてしまうのだが、その辺は差し引いて考えるようにしたい。
ちなみに、時代の子なので「Miracle Love」は好きだ。
秀逸だったのは、笑福亭鶴瓶が演じる会社役員について、牧瀬里穂演じるキャンペーンガールが「もんじゃ焼きみたいな奴」と評するところである。
何と美しい表現だろう、僕もどこかで(誤解のないように)使ってみたい。
幻想的な映像、ガラス窓にも映らない姿、効果的な選曲。
川越という実に絶妙なロケーションハンティングと、それゆえに光る「東上線」というセリフ。
最後はちゃんと盛り上がりを見せて、静かに終わる、安心の着地。
結婚パーティーでの「帰れない二人」は意図的な演出なのか。
「最近はトイレットペーパーを買わない」とのたまう牧瀬里穂の演技であっても、ファストフード店の長回しは魅力的で、大人の商業的汚さが際立つ、やはり素晴らしい映画である。
主役の近くで印象を残す三村さんには、驚かされた。
まともな毬谷友子にも驚く。
改めて気づいたのだが、僕が好きな映画の特徴の1つは、天使が出てくるものである。
天使とは、つまり「東京上空いらっしゃいませ」のコオロギのような位置のキャラクターである。
他の映画だとたとえば…、といっても、例のごとく全く思いつかない。
まあ、よく覚えてないけれど、深田恭子主演の「天使」は条件にマッチしていると思う。
「鍵がない」での大森南朋も、範疇に入ってくるように感じる。
相米慎二作品を見ることのデメリットは、作品の余韻をしばらく引きずってしまい、現実生活の営みがとてもつらくなることだ。
周囲が色あせて見えてしまい、頭の中では「帰れない二人」が流れ続けている。