曇天の続き

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2016-10-21 Fri.

連絡

2016-10-21

佐藤泰志「海炭市叙景」を読了。

短い時間を切り取り、大きな動きのない様子を、1つの季節について9編つむぐ。
登場人物の心の中に降りていき、そう簡単に出ることのない思いを丁寧に描き、それでいて現実は滞りがないように過ぎていく。
そんな仕事は、僕から見るととても大変そうに見えるのだが、小説家にとってはどうなのだろうか。

海炭市のモデルとされるのは、函館市である。
何もない場所から、繁栄がもたらされ、時代のなりゆきに伴い市の中心が移り変わり、やがて画一化した文化が外部から持ち込まれ、はびこるようになる。
函館と対称的な場所にあり、過去に路面電車を有していた北九州市に生まれた僕は、自分の出身地のことに想いを馳せざるを得なかった。
かたくなに「首都」と称する作者の姿勢にも、矜持を感じる。

さて、「今治水」である。
歯痛をごまかすために、中年男性が塗っているものだ。
「こんじすい」と読む。
「今治水」1つ取り上げるにしても、こんな人の描き方があるものかと、感心する。

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