反発
2016-09-22
「行列」を学んだ時、数学で初めて挫折した。
あまりに唐突な概念で、理解がついていかなかった。
その後、大学で線形代数学を学び、単位を取得したが、行列を使いこなせるまではならなかった。
おかげで、構造力学では苦労し、そちら側のキャリアは閉ざされた。
数年前、行列を駆使して進める仕事があり、逆行列とか固有値とかを通じて、複数の数値の組を同時に扱うのに行列が大変役に立つことを知った。
高校のときは想像できなかったが、行列の概念が自分の生活を一時期支えた。
「こんなことをして、何の役に立つのだろう」
そう思いがちなのだが、そんな時は、
「まずは、役立てることができるようになる能力を習得せよ」
と自分に言い聞かせるようにしている。
もっとも、長く生き残っているシステムに対しての話であり、指示されたことを何でもやる、というわけではない。
つまらない思い付きの大半は、時間がないので、黙殺している。
逆に言うと、教師は信念をもって生徒に教えるべきである。
僕は時々、負の数同士の積が正の数になる理由を尋ねられる。
いろいろな説明を試みたが、理解は相手の素直さに依存すると判明したので、今は「そのように便宜上決めた方が、いろいろとうまくいくから」と答えている。
その後訪れる、奇跡のような「閉じた世界」を目にするまでの我慢である。
そして、「積を負の数としたいのなら、どうぞご自由にそのような数学体系を開発してほしい」とお伝えしている。
僕には、その複雑さが耐えられない。