不備
2014-01-09
2013年のことだ。
ある駅で、乗っていたエスカレータが突然止まった。
かなりの衝撃であった。
停止後、何とか立っていられた。
周りを見渡しても、特に危険なことが起こっているわけでもなかった。
それどころか、騒いだり、わめき散らしたりしている人もいない。
都会の慣例に倣い、僕も黙って、止まっているエスカレータを何事もなかったように進んだ。
目的地に向かう、という目的を果たすために。
大事故にならなかった理由として、停止したのが上りのエスカレータであったからだ、と僕は考えていた。
しかし、それはどうやら違っていたようだ。
エスカレータに乗る際、僕は当然手すりにつかまる。
昨年、急停止したエスカレータに乗っていた時も、そうだった。
そして、周囲の人たちも倒れなかったところ見ると、みんな手すりをつかんでいたのだろう。
あるいは、オリンピックに出場できるほどの運動神経の持ち主がそろっていたのかもしれない。
いずれにしても、確認していないのでよくわからない。
エスカレータに乗る際、手すりをつかまないのは、過失である。
乗っているエスカレータが停止することはない、と考えるのは、根拠のない過信である。
過失によってもたらされた負傷が、法律でどのように扱われるかは、ぜひとも知っておきたい。
何より、他人に迷惑をかけるわけにはいかない。
そして、他人の過失に巻き込まれるわけにもいかない。
エスカレータがごくまれに急停止することも、不注意な行為をする人間がごくまれにいることも、織り込んでいよう。
でも、手すりをつかんでいて、もしかして指を挟むかも、と想定するのも疲れる。