桟橋
以下は、この日記にふさわしくない、かなりベタな内容である。
今となってはどうしていたのか、わからないことが数多くある。
そのひとつが、映画館で上映される映画の情報をどのようにして集めていたか、ということである。
小倉にいるとき、映画の上映情報は、新聞から得ていた。
スクリーンの数が、新聞で確認するくらいで十分なくらいであったからだ。
新聞に上映開始時刻が載っていない場合は、新聞に載っている番号に電話して、問い合わせた。
僕が東京で初めて映画を観たのは、大学受験で上京したときだ。
そのときは何を見るか事前には決めておらず、新宿の紀伊国屋書店で雑誌「MONTHLY WALKER」か「MEN'S WALKER」を立ち読みし、めぼしい映画を見定め、地図を何となく暗記し、映画館へ向かった。
行ったのは渋谷のユーロスペースで、そのときは今の場所とは違う場所にあって、うろ覚えの記憶で行ったものだから、当然道に迷った。
東京に出てきてから、一時期は東京中をかけずり回って映画を見に行ったが、そのときはどうしていたのだろう。
そこで登場するのが、やはり「ぴあ」である。
「ぴあ」に掲載された映画案内の中からめぼしい映画を見定め、上映館のページに飛び、上映時刻を確認し、映画館の場所を覚えた。
そして、道に迷いながらも映画館にたどり着き、映画が始まる前に次回上映のフライヤーを集め、内容を吟味し、次に見に行く映画を決め、帰宅途中にコンビニに立ち寄り、「ぴあ」で上映時刻を確認する、というルーティンを繰り返した。
もちろん、「ぴあ」は立ち読みですませていた。
…ということをしていたとは思うのだが、2011年から見ると、「本当にそんな神業のようなことができていたのだろうか」とすら思えてくる。
「ぴあ」を立ち読みすることによって、観たい映画を探し、観に行きたいと思う映画を記憶し、映画館の場所を記憶し、上映時刻を記憶し、それでやっていけたのだ。
今となっては、立ち読みするほどの体力はないし、記憶力も失っている。
昨年の夏、福岡に行った際に、福岡で映画を観ようと思ったのだが、観たい映画をどうやって探せばいいのか、一瞬困った。
結局ウェブサイトに頼ることになり、そして結局キャナルシティのユナイテッド・シネマで「告白」を観るという、パッとしない行動に終わった。
「ぴあ」がなかったころ、映画ファンは映画館を回って上映情報を得ていた、と聞く。
1990年代後半の僕には、「ぴあ」がなかった時代のことがよく理解できなかった。
「ぴあ」がないなんて、不便すぎて身動きが取れないだろう、とまで思った。
それが今となっては、ウェブがなかった時代のことすら忘れてしまっている。
そんな「ぴあ」という雑誌も、最終号を迎えた。
ふらっと街に出て、時間があるから映画を観ようとしても、もう「ぴあ」から情報を得ることはできない。
現状では、スマートフォンかなにかでウェブサイトにアクセスし、小さな画面にいらだちながら情報を得なければならない。
「東京ウォーカー」か「TOKYO1週間」でもいいのだけど、…いや、「TOKYO1週間」はもうないか。
とにかく、お疲れ様でした。