茶猫
2009-12-19
時間は少し前にさかのぼる。
自宅アパートの倉庫のそばに、謎のボックスがある。
ある日、「何が入っているのか」と思い、のぞいてみると、隙間から猫がいることが確認できた。
薄い茶色の猫だ。
自宅周辺では猫を見かけることが多い。
自宅裏の通称「草取り競技場」にいたっては猫の通り道になっている。
よく、通りすがりの猫が僕が住んでいる家の中を見ている(頻繁に横切る猫の1匹に「カンシ」(監視)という名を与えた)。
おそらく、そのうちの1匹が寒さをしのぐためにもぐり込んでいるのだろう、とそのときは推測した。
それから、数日後。
また謎のボックスの隙間をのぞいてみると、同じ色の猫が小さくなっている。
しかも、2匹になっている。
バナッハ=タルスキーのパラドックスか?
どうやら、先日の猫がそこで子どもを生んだようだ。
親猫は不在だが、おそらくエサでも取りに行っているのだろう。
それからしばらくの間、その隙間をのぞくのが楽しみになった。
でも、手はいっさい出さなかった。
一説によると、人間に触られたノラ猫は、猫の集会に入れてもらえないのだとか。
人間のにおいが体についてしまい、他の猫がそれを嫌うからだ。
真偽は不明だけど、そんなことを聞いては無闇に触れない。
1か月くらい経ったある日、いつものように隙間をのぞくと、そこはがらんとしちゃってた。
「でも…、すぐになれると思う。だから…、心配するなよ」
猫つながりで、この台詞を思い出した。
それ以来、遊佐未森の「クロ」を聞くと、街中でも目の前がかすむようになった。
元気に遊び回っていて欲しい。
でも、うちのゴミ捨て場は荒らさないでね。