曇天の続き

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2009-08-17 Mon.

監視

2009-08-17

僕の祖父は、少々変わっていた。

祖父の趣味は、カメラだった。
写真ではなく、カメラだ。

何かにつけては、カメラを頻繁に購入していた。
性能がいいカメラではなく、ディスカウントストア(例えば、MrMaxとか)で売っているような安いコンパクトカメラだ。

フィルムにもこだわっていて、必ずコダックでなくてはならず、現像もコダックの店にしか出さなかった。

しかし、いくつもカメラを買い換えた一方で、写真を撮ることは少なかった。
祖父はカメラを僕に見せてはいろいろと説明してくれたが、祖父に自分の姿を撮影してもらった記憶がない。
祖父は毎年のように高野山参拝や四国八十八ヶ所参りをしていたが、その旅行でも写真を撮らない。
ごくたまに撮る写真も、風景が多かった。

祖父は、写真が好きなのではなく、カメラが好きだったのだと思う。
その気持ちは、何となくわかる。

2000年前後になって、写真を頻繁に撮る人が増えたように思える。
何処に行くにもカメラを持って回り、ちょっとイベントがあるとなれば写真を撮り、飲み会の席にまでカメラを持ち込む人もいた。
レンズ付きフィルムが女子高生の必須アイテムになった。

デジタルカメラが普及し始めてから、その傾向はますます激しくなった。
「フィルム代」という概念がなくなり、気軽にシャッターを押せるようになった。
携帯電話にカメラ機能が搭載され、ますます気軽に写真を撮られ、撮られた写真はウェブで全世界に公開された。

いつの間にか、人にレンズを向けることが、当然の権利として暗黙的に主張されるようになった。
逆に、写真に撮られることを拒否する主張が受け入れられづらい社会になった。
酒税を廃止して、シャッターボタンに税金をかければいいのに。

最近に至っては、監視カメラや防犯カメラである。
街のいたるところにカメラが設置されている。
映像のいくつかはウェブで公開までされている。
そして、事件があれば、警察にその映像が提出され、テレビ局は映像を放送する。

防犯カメラの映像が防犯のためだけに使われるのならば、別に構わない。
しかし、本当に防犯のためだけに使われているのか、不安が尽きない。
これまで、カメラの映像を見て「変なやつが映っている」と笑いのタネにしている現場に何度も遭遇したことがある。

個人情報については法律が整備されたため、情報の保護方針に同意を求められるようになった。
だったら、防犯カメラについても、無断に撮影するのではなく、「防犯目的以外には使用しません」という担保が欲しい。
できれば、撮影する前に使用方針を示してもらい、1つ1つ同意の署名をしたい。

「そんなに神経質にならなくても」と思われるかもしれない。
そう思われる方には、有名人が映った防犯カメラの映像を週刊誌が無断で掲載した2006年の事件を知ってもらいたい。
この事件は裁判沙汰になり、有名人側が一応勝訴したが、だからといって安心はできない。

撮影されたくない権利を主張したいけど、もはや手遅れなのだろう。

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