垂水
蒸し暑い。
先日の夜、今夏初めてエアコンのスイッチを入れた。
ちなみに、自宅のリビングにあるエアコン、以前書いたように、リモコンが壊れている。
メーカーに問い合わせてみたら、このエアコンは1992年製であり、リモコンのスペアが製造中止なので、リモコンはもう供給できない、とのこと。
なので、メーカーの指示通り、本体の「入切スイッチ」をかちゃかちゃ入れ替えて使うようにしている。
タイマー設定も温度設定もできず、気温で判断してくれる冷暖房の切り替えだけが唯一使える機能である。
エアコンを起動させて10分後。
「ダダダダダーッ」と音がした。
見ると、エアコンの室内機の下部から透明な液体が垂れている。
垂れた液体の行き先をたどっていくと、5月に父から譲り受けた「諫早菖蒲日記」が見事にぬれている。
このとき、僕はしこたま酒を飲み、かなり酩酊していた。
酩酊していたせいか、かなり動揺し、「諫早菖蒲日記」の上にタオルを置き、その場をしのごうとした。
その本を別の場所に避難させることもせずに。
後日、酔いがさめた頭で水漏れの原因を考えることにした。
2009年の僕にとって、「考える」とは「適切な検索ワードを思いつく」ことである。
「エアコン」「水漏れ」でウェブを検索してみる。
その結果推定される原因は、排水管が汚れで詰まっている、というものであった。
だから、排水されずに、室内機から水がこぼれている。
なるほど、少し考えれば自力で推定できそうな原因である。
それでも、僕は考えつかない。
ウェブがなければ生きていけない。
ウェブがなければ2秒で死んじゃう。
これぞまさに「検索病」。
では、どうやってその原因を排除するか。
あるサイトによると、「排水ホースの排水口を口でくわえこみ、詰まりを吸い込む」とある。
できるか!
結局排水ホースの口から細長い何かを差し込んで、詰まりを取り除く、というのが、現実的で素人にもできる方法のようだった。
さすがにそのくらいは僕でもわかる。
問題は「何を差し込むか」であるが、あるページに「余っている電話のモジュラーケーブルの端を切り差し込んでみた」という記述を発見した。
電話のケーブルなら、家に7本くらい余っている。
使い道がなくて困っていたところだった。
なるほど。
でも単に切ってしまうのは芸がないので、切り口を斜めにする、という芸をつけてみた。
いざ、排水ホースのある場所へ。
排水ホースは下の部分が朽ちてなくなっていて、地面から2メートルくらいのところに口がある。
口は、土みたいな泥みたいなもので完全にふさがれている。
これでは排水されないわけだ。
「今から突撃しまーす」と留守番電話に吹きこみ、早速電話ケーブルをたぐる。
…とここで注意しなければならないのは、詰まりを取り除いた後のことだ。
軽く想像するに、詰まりの向こう側には、きったないスイ、つまり汚水が待ち受けているはずだ。
ずっとたまっている水だから、きっと腐っているはずである。
詰まりを取り除けば、2メートルの高さからそれが流れてくるわけだから、かなり気をつけなければ最悪自分にかかってしまう。
ウェブには書いてなかったが、それくらいわかる。
で、早速かつ慎重に電話ケーブルを差し込んでみる。
入り口すぐの土は取り除いたが、水は出てこない。
気折れすることなく、続けて差し込む。
2メートルくらい差し込むと、行き止まってしまった。
それでも、力を込めて差し込んでみると…。
スッ、とケーブルが入り込み、続けて黒い液体が出てきた。
現場は尋常ではないにおいが立ちこめた。
排水ホースから出てきたものを見ると、黒くてくさい液体とともに、かぶと虫の幼虫みたいな形状の茶色いものがちらばっている。
「もう死にたいな」と思った。
かくして、エアコンの室内機からの水漏れは解消された。
これで今年の夏こそは無事に越すことができそうだ。
エアコンを買い換えればこんな苦労もしないのだが、何と言っても資金が不足している。
「エコポイントを貯める」って資産家の道楽だと思う。