舞台
10年くらい前。
深夜に放送されている30分ドラマを好んで見ていた。
「ハートにS」に広末涼子が出た頃の話だ。
フジテレビとテレビ朝日と日本テレビとテレビ東京でやっていた深夜ドラマをよく見ていた。
例によって、内容はおろか、番組のタイトルすらほとんど覚えていない。
しかしながら、ある番組だけは覚えている。
フジテレビでやっていた「Tokyo 23区の女」。
東京の各区を舞台とし、女性を主人公にしたストーリーが展開される1夜完結のドラマである。
「渋谷区の女」「世田谷区の女」といったように。
このドラマを、僕は小倉で見ていた。
東京という街は区ごとに特色があり、だからこそ各区で1つずつドラマを作ることができるんだ、と感心した。
北九州ではこんなことはできない。
「Kitakyushu 7区の男」というドラマを想像してみたが、どの区でも法律に抵触する話、あるいは市政と市民との小競り合いの話になりそうで、放送に耐えられそうにない。
小倉で暮らした最後の年、僕はこんなことを考えていた。
ところで、先日「サッド ヴァケイション」という映画を見た。
青山真治監督の作品である。
この映画は、いわゆる「北九州サーガ」の完結編、と言われている。
「Helpless」「EUREKA」に続く三部作である。
北九州を舞台に連作を作ることができる、というすばらしい証明である。
「Helpless」を見たときもそうだったが、「サッド ヴァケイション」を見た後、僕は少し調子が悪くなった。
たぶん、多用されている北九州弁や、本当にいそうな荒々しい北九州人の描写のせいだろう。
「タフでなければ暮らしていけない。ゴネなければ暮らす資格は得られない」
フィリップ・マーロウが北九州についてつぶやいた言葉、ではない。
北九州をリアルに描くと、こんな感じになる。
「北九州サーガ」は正しい。
全く「尾道三部作」がうらやましい。
「下妻物語」ですら、うらやましく感じる。
ちなみに、深夜ドラマの方だが、「美少女H2」あたりで見切りを付けた。
「ケータイ刑事」シリーズなんて、見たこともない。