曇天の続き

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2009-01-05 Mon.

夜曲

2009-01-05

「いっそ」というのが、祖父の口癖であった。

僕が何かへまをしたり、くだらないことを言ったり、憎まれ口をたたいたりすると、祖父は決まって、

「いっそ」

と言い放った。

辞書には「いっそ」という言葉が載っているが、ここでいう「いっそ」とは意味が違う。
祖父が口にしていた「いっそ」とは、おそらく方言なのだろう。
しかし、僕は祖父からしか聞いたことがない。

この世で1人しか使用しているのを聞いたことがない言葉のニュアンスをどう共通語訳すればいいのかわからない。
強いて言えば、「いっそ」とは「ダメだ」という意味だろうか。

僕を含む孫どもは、祖父の言う「いっそ」という言葉がたいそう気に入っていた。
なので、何とかして祖父に「いっそ」と言わせようと、あるゲームを好んで行った。
その名は、「いっそ言わせゲーム」。
祖父の目の前でいろいろな失態を犯し、最初に祖父に「いっそ」と言わせた者が勝ちである。

実にくだらないゲームだが、このゲームはもはやプレイできない。
祖父は数年前に大往生を遂げてしまった。

ところで、この「いっそ」という言葉を全国的に広めた人物がいる。
それは、「いっそ セレナーデ」を生み出した井上陽水である。

この場合の「いっそ」とは、辞書に載っている「むしろ」という意味では断じてない。
なぜなら、井上陽水は、祖父と同郷の出であるからだ。
なので、「いっそ セレナーデ」の「いっそ」とは、井上陽水の出身地の方言、すなわち祖父が口にしていた「いっそ」と同じ意味を持つ。

つまり、「いっそ セレナーデ」とは、誰かの行動を評した「ダメだ 夜曲」なのだ!

…というのが、レコード大賞の懐かしの映像を見ながら父親が唱えた学説である。
真偽のほどは定かではない。
しかし、祖父と井上陽水が同郷の出であることだけは事実である。

なお、これまた同郷のメイクアップ・アーティストのIKKOの芸名の由来は、これまた同じ「いっそ」という方言にある。
…とは、父親も唱えていないし、誰も言っていない。
ただの作り話である。
注意されたい。
(蛇足:IKKOと井上陽水の出身地が近いことは事実である。)

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