曇天の続き

Diary > 2001 > 11 > 13 > | Calendar | RSS 1.0
2001-11-13 Tue.

格差

2001-11-13

東京に来てもう4年半が経ってしまった.webを作っていてよく「千駄木」とか「六本木」とか言う地名を出したりするけれど,こうやってローカルな地名を気兼ねなく世界中に発言できるのも東京に住んでいるからだ.僕は子供の時からずっとテレビを見てきたのでよくわかるけど,全国ネットのテレビの中は常に東京だった.「新宮霊園のコマーシャルのテーマソングが長渕剛」というネタは福岡でしか通じない.全国ネットでは,福岡で言えば新宮霊園のネタのような「東京でしかわからない笑い」というものが蔓延していた.例えば「ドン・キホーテ」の名がよくテレビ出てて来るけど,関東以外にすんでいる人にはおそらくその笑いは理解不能だと思う.日本中に東京でしかわからないローカルな笑いを配信できるのも,東京だからこそ許される.「出没! アド街ック天国」がネットとして成立するのもローカル度が東京に偏っているからだ.一方,川上泰夫(ヒップアップ)がMIKIのCMに出ているという笑いが通じるのは福岡だけで全国ネットの笑いじゃない.みぞえ住宅の会長はまだ会長なのか,とか,田中みずきの体重は入社以来どのくらい増えたのか,という笑いが通じるのも福岡だけだ.あるいは「ABCDEーす」や「ナイトinナイト」や「『おはよう朝日です』のピアノジングル」という笑いが通じるのも関西だけだ(なぜかABCばかりだが).どれも,決して全国ネットの笑いじゃない.東京だけでしか通じない笑いのみが配慮なく全国に送り出されている.そして,地方在住者はそれに憤りを感じるどころか理解できないことに引け目を感じてしまう.

この形態が本当にいいことなのかどうかわからないけれど,テレビをずっと見てきた僕としては,「東京楽屋オチ」とも呼べる東京だけでしか通じない笑いの圧力が強すぎて,東京の上位性を本当に強く感じてきたし,この笑いが理解できないとテレビのおもしろさは理解できないとまで感じることもあった.そして,東京ローカルの笑いは理解できて当然だ,という作り手の強迫観念を感じていた.だから東京に出て来た,と言っても本当に過言ではない.東京に住むようになってから故郷の人々に東京の地名を簡単に口にする時も,一方では自分の以前の気持ちを思いだし罪悪感も感じるけど,他方では心地よさを味わう自分がいる.

地方の番組のクオリティは決して低いわけではないと思う.おそらく地方の番組の場合,武器として使える話題のネタを理解できる視聴者が東京の番組のそれに比べ少ないのだ.つまり,東京の番組はローカルオチに頼れる部分が大きいのだ.

この傾向は、2008年になってさらに強くなっている。 逆に、地方は東京を見捨てて、独自番組をやる傾向にある。

(2008-03-22)

Link
Diary > 2001 > 11 > 13 > | Calendar | RSS 1.0