ミーハー
相米慎二作品のビデオやDVDの注文が製造元に殺到しているらしい.僕は「台風クラブ」のビデオを西荻窪北口のレンタルビデオ店でしか見たことがないので,ぜひとも普及してもらいたい.
世界中のテレビっ子がその本領を発揮した1日となっただろう.皮肉なことに大事故,大事件ほどテレビ好きの血が騒ぐ.
「米中枢同時テロ」のような事件においてテレビっ子の視点は人によってはっきりと分かれてくる.まず,「ライブ映像を重視する」人々がいる.今回の事件において正時に近かったことを考慮すると,2機目が激突するシーンをライブで見逃すことはテレビマニアとしては深夜かワーキングタイムでなければ大きな失態となるだろう.そこは絶対に押さえていないとならない.僕もあの時間なら「ジャングルTV」を見ていたと思うが,台風情報が気になってNHKを見ていたのだ.堀尾キャスターが曜日を間違えたのを見て「これは始末書だな」と思った.テレビっ子ならおそらく台風情報を気にすると思うので,あのシーンを偶然でも見たテレビっ子はかなりの数に上っただろう.ライブを重視するにはビルの崩壊シーン,大統領や首相の記者会見などを押さえておくことが要求される.次に「映像量」を重視する人々.激突や破壊のシーンをいくつ押さえられるかが今回ではバロメータとなる.あるいは「登場人物」を重視する人々.ブッシュ大統領,小泉首相はもちろん,アシュクロフト司法長官,ラムズフェルド国防長官,オサマ・ビン・ラディン(彼の場合,各メディアの呼称の違いも注目される)と彼の組織「アルカイダ」などを覚えようとする.逆に「番組に出てくる人物」に注目する人々もいる.キャスター(いつの時間に誰が出てくるのか,アナウンサーかキャスターか),記者(この人はいつ,何処で何の事件の記者経験があるか),評論家(航空評論家,軍事評論家,中東評論家,危機管理評論家,建築専門家,政治評論家,経済評論家,ニューヨーク通など)の特徴やいくつ番組に出ているかを綿密につかもうとする.さらには「ニュースソース」に注目することも考えられる.チャンネルをパカパカ変え「これはCNN」「この報道はAP」「この映像はABC」など発信元を整理し各放送局の報道の速さを比較することもできる.「番組の作り方」にも目がいくだろう.選挙報道,台風情報で定着したL字型画面によるテロップはほぼ各局が採用していた.情報量が拡大したせいか,テロップのネタがなくなる場合が多かった.あとは報道の違い.TBSは「某企業のオフィスは300人の従業員がいるがそのうち数人が安否不明」といういかにも不安をあおるような(300人に目がいくような)報道をしていたし,他の放送局を見ると早い段階で中東評論家を使って不安を誘発する場合が多かった.また,裏方さんの声やスタジオの雰囲気が漏れ聞こえてくるのも気になる.さらには「タイムテーブル」もかなり気にする人が多いと思う.注目点は「テレビ東京はいつ通常放送に戻るのか?」だ.「おはスタ」を放送したかがどうかが僕は気になる.最後に「CM」を気にする人もいるだろう.こんな時に「JAL悟空」の宣伝は流せない.もちろん「保険」もダメ.穴埋めはおそらくACになったのだろう.
そして,連日連夜報道番組を見て集められた情報が利用される場面といえば,テレビっ子同士の情報交換でニュースソースを当てあったり,ラサール石井が「ラサールのテレビでずっとあさま山荘見ていた」と言うのに代表されるような単なる自慢であったりでしかないのだ.
久しぶりの長文は、興奮している証拠だろう。 最近だと、安倍晋三が首相を辞めた時、これくらい興奮した。 相米慎二作品はDVDで結構手軽に見られるようになった。 死なないと評価されないのも哀しい。
(2008-03-22)