発動
2013年最大のピンチは、飛行機に乗り遅れそうになったことだ。
確かに、ギリギリと言われても仕方ない。
羽田空港のレストランで、のんきにパンケーキを食べていたことは認める。
それでも、出発の25分前には保安検査場の列に並んでいた。
「出発の時刻が迫っているお客様がいらっしゃいます。優先させていただけますでしょうか」
有無を言わせない地上スタッフの質問、そしてこちらは何の返答もしないまま、列の前を割り込まれた。
5、6人ではない。
20人以上割り込まれた。
「なぜギリギリで行動するのかね」と、この時はのんきにひとりごちた。
僕の番がやってきた。
チケットをセンサーにかざしても、アラートが出る。
スタッフは、「時間を過ぎておりますので、お通しすることができません」と告げた。
「どうすればいいんですか?」という問いに、「外のスタッフに言ってください」と言われた。
引き返して、スタッフに事情を説明すると、「もう乗れません」とのことだった。
僕は、出発時刻15分前に保安検査場を通過するように指示されていることを知っていたが、時刻を過ぎれば機械がロックすることを知らなかった。
だから、彼らは他人を差し置いてでも、スタッフに申し出て通過しようとしていたのだ。
いつまで経っても飛行機に乗り慣れない、世間知らずとは、僕のことである。
僕だって、こんなことはしたくない。
でも、使わなければならない時がある。
男一代、小倉出身の「気の荒さ」である。
「手短に言うけど、時間前に並んでいたのに、前を次々に割り込まれた。ルールを守っていたのに、乗れないの?」
見苦しい食い下がりなどしたくないし、相手が困るようなことも言いたくない。
「考えられへん」とキレるのが正しいとも、同意を得られるとも思ったこともない。
現に、地上スタッフの方の顔色が変化したのを見て、僕はものすごく後悔した。
後悔することをわかっていて、僕はこの方法を選んだのだ。
スタッフは、プレミアムメンバーが通過する安全検査場に僕を連れて行き、僕はその場で手早く検査を受けることができた。
僕は、スタッフに何度も感謝を伝えた。
スタッフに動いていただけなければ、僕は空港で無力である。
検査場の目の前の搭乗口だったので、搭乗には十分に間に合い、飛行機は定刻前に動き出した。
スタッフの寛大な対応のおかげで、ピンチは回避できた。
さて、僕が小倉出身でなければ、飛行機に乗れただろうか。
僕は、実に久しぶりに、小倉出身であることに感謝した。
もっとも、一番感謝しているのは、スタッフの方に対してである。
飛行機に乗り遅れたら、どうなるのだろう。
この答えを知ることがないよう、前もって行動し、自分の権利を守ることを心がけたい。
スタッフの方の手を煩わせないためにも、事情があって遅れている人たちに向かって、はっきりと「並んでいるんですけど」と言えばよかったのだ。
本当は、「羽田空港における搭乗手続きマナー改善キャンペーン」をACジャパンに提案したい。
でも、高速バスの遅延などが原因で、自分も救済される可能性が十分にある。
だから、声高には叫べない。