曇天の続き

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2008-12-17 Wed.

十周

2008-12-17

今年は10周年の年である。

何が「10周年」かというと、自然気胸の無発病期間のことである。

自然気胸の初歩的な知識はウィキペディアを参照してもらうことにして、ここに僕の自然気胸歴について記しておこうと思う。

自然気胸を発症したのは、1995年2月のことだった。
ちなみに1995年には、3月までに実に10を超える医療機関を受診した。
それゆえ、「あと10年くらいで死ぬな」と感じたくらい、生命力が弱っていた年であった。

1995年2月4日土曜日、学校で授業を受けているときに、突然左胸を激痛が襲った。
「これは後ろの席のやつが背中をナイフで刺したに違いない」と思い、後ろを振り返った。
しかし、後ろの同級生は、何食わぬ顔で授業を受けていた。

なので、「筋を違えたのかもしれない」と思いなおし、痛みに独りもだえていたが、どうにも痛みはおさまらない。
やむをえず教師に申し出、文字通り這うようにして保健室に向かった。
保健室の先生は、僕の症状を聴くと手慣れた様子でタクシーを呼び、僕は救急病院へと運ばれた。

レントゲンを撮ると、左肺上部が小さくしぼんでいるのがわかった。
病名は、自然気胸。
簡単に言えば、肺に穴が開いたのだ。
その場で入院することが決定した。

医師の話によると、僕のような特異体型の若者男性に発症しやすい。
病院の看護師からは、「標本にしたいくらい典型的な体型の気胸患者」とお墨付きをいただいた。
なので、僕が息絶えたら、玉川病院の気胸研究センターに献体してもらいたい。

やっかいなことに、自然気胸は再発する可能性が高い病気だ。
肺に穴が開く理由は、肺のある部分が穴が開きやすくなっているからである。
一度穴が開いたことのある肺には、他にも穴が開きやすくなっている箇所が残っている可能性が高い。
よって、自然気胸の再発率は高い。
医師が言うには、「30歳くらいまでには落ち着くでしょう。それまでは気をつけてください」。
しかし、いったい何を気をつければいいのだろう。

それ以後、医者の予言通り、自然気胸は2度再発した。
1997年と1998年。
右肺と左肺を1度ずつやった。
そして、1998年の再発の時、左肺を手術した。
穴が開きやすくなっている部分を取り除く手術だ。

1998年の再発後も、また発病するのではないかという恐怖におびえながら生活していた。
2002年にネパールに行かざるを得なくなった時は、人生最大のギャンブルだな、とまで腹をくくった。
実際、胸がひどく痛むときもあった。
おそらく小規模な気胸だったと思うが、しばらく安静にしていたら痛みは治まったので、たぶん自然治癒したのだろう。

しかし、手術後10年が過ぎ、その間入院が必要なほどの再発は起きなかった。
不吉なカーブは通過したのだ。
もう再発のリスクはないのだろう。

「経済白書」1956年版の中で、「もはや「戦後」ではない」とうたわれた。
それにならい、10周年を契機にここに高らかと宣言しようと思う。

「もはや「気胸」ではない」

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